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人間学・古典

第82講 「帝王学その32」
任用するところは、必ず須らく徳行学識をもって本となすべし。

先人の名句名言の教え 東洋思想に学ぶ経営学


【意味】
役職者を登用する際には、(学識才知を重要視しがちであるが)、徳行人望をより考慮すべきである。



【解説】
「貞観政要」からの言葉です。
徳人とは、日頃の立ち振る舞いが立派で周りから尊敬の対象とされる“人望ある魅力の人”であり、学人(才人)とは、単純に“学問知識の多い便利な人”であり、こちらの方は人柄や立ち振る舞いとは無関係です。

名著「資治通鑑(シジツガン)」に「徳の才に勝る、これを君子という。才の徳に勝る、これを小人という」とあります。徳性と才知を差し引きして、徳の部分が多ければ君子並みの人物とし、才の部分が多ければ小人並の人物と断定し、徳人至上主義の見方をしています。(注:「資治通鑑」は、司馬光(シバコウ)が高級官僚を失脚後、19年間をかけ編纂した史書で、戦国時代(BC403~)以後1362年間の294巻。史実や人物を丁寧に分析した第一級の人間学の書)

「徳の才に勝る、これを君子・・」は(徳行>才知)ですから、料理界の人材で例えるなら年季の積んだ本物の味を出せる一流料理人です。「才の徳に勝る、これを小人・・」は(徳行<才知)ですから、ファストフード店などのアルバイト料理人です。これらを基準にして料理界の人物登用を考えれば、客を唸らせる味を出すことのできる一流の料理人やシェフを優先し、器用であっても味を引き出せない料理人の登用は控えることになります。

人間学の世界では“徳性は人間学の最重要項目の一つ”として徳人至上主義の捉え方をします。しかし“徳性とは?”と改めて問われますと、一言で言い表せる言葉はなく、漠然としたフィーリングで感じ取るしか方法がありません。その上で敢えて定義付けをすれば「日頃の言動振る舞いが周りから信頼され、その人の元で働きたいと感じさせる不思議な魅力」となり、更に短く表現すれば「周りから認められた人望品格」となります。

更に登用基準を考察すれば、掲句の(1)徳性(2)才知に加えて(3)「修羅場体験」を加えたいところです。登用条件を満たし一見理想的な役職人物であっても、修羅場体験をしているかどうかで、イザとなった時に艱難に向かう度胸が違ってきます。
では「修羅場体験とは何か?」というと、戦争やケンカの末の悲惨な体験とか、強盗に命を狙われたという一時試練ではありません。自分の思惑ではどうしようもないピンチを一定期間じっと耐え抜いた人生の忍耐体験のことです。
日本の電力の鬼といわれる松永安左エ門(マツナガヤスザエモン:1875~1971)翁は「経営者が一人前になるには、投獄、倒産、大病の内2つを経験することだ」と述べていますが、この種の修羅場体験をしていますと、「忍耐力の容量」が大きくなりますから、少々のことではへこたれずに最後までやり抜くことができます。

 

杉山巌海

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