ホンモノの商品を持つところが勝ち抜く時代である。
特に、食べ物は本物でなければ勝負にならないし、長続きしないものである。
東京・銀座で、しかも 本物の「松阪牛」を提供している「焼肉割烹・松阪銀座店」は、厳しい外食不況にもかかわらず、
常連客に支えられ繁盛している。中国を始め、外国人旅行者も 本物の味を求めて、来店者が増え始めているという。
「松阪牛」(まつさかうし)を名乗っている焼肉専門店はあるが、三重県特産牛肉(松阪牛)販売指定店(第25号)であり、
銀座の一等地で開業している焼肉店は珍しい。平成7年3月の開業以来、15年の実績を持ち、和風の焼肉会席を中心に、
焼肉、しゃぶしゃぶ、ランチメニュー(ハンバーグランチ、カルビラン チ、ロースランチ)も充実している。中でも、1日限定
12食のハンバーグランチ(1000円)はいつも完売の人気メニューである。
「焼肉割烹・松阪銀座店」の店主であり、運営会社の(株)伸興物産の佐々木正喜社長(59歳)は
「松阪牛を一頭(枝肉・第一次精形)ごと仕入れているのがうちの店の特徴です。初めてのお客様に『松阪牛証明書』
(個体識別番号)をお見せすることもあり ます。本物の松阪牛を、本物のメニューで、本物の出し方にこだわっています」という。
5年前、近くに姉妹店「牛かつ松阪銀座店」を開業している。松阪牛を 使ったメンチかつ、コロッケ、串かつ、牛かつなどの
カウンター席だけの大衆店である。
松阪牛を一頭丸ごと仕入れているので、枝肉の加工技術を活かした料理(メニュー)の提案に工夫を凝らしている。
「どうやって食べてもらうか」「どういうメ ニューを提案するか」の知恵を絞っているのである。「焼肉割烹・松阪銀座店」は
コースメニュー(6500円から1万1000円の4種類)とオリジナルサー ビスセット(特選リブロースセット4500円、しゃぶ
しゃぶセット4500円など6種類)を提案。顧客に対して、事前にコースとセットの予約を勧めている。
夜の顧客は常連客が8割以上という。日時、人数、メニューの決定という、予約を勧めている理由である。
事前の準備ができるように厨房3人、フロア2人で40席(個室、ボックス席、カウンター席、掘りごたつ式個室)を
賄っている効率的な経営である。佐々木店主はスタッフに常に「仕事で手を抜いたら、見抜かれるぞ」と
檄を飛ばしている。「折角やるなら、ちゃんとした仕事をしよう」と励まし続けている。
手を抜かないで誠実に仕事をすれば、お客様は認めてくれるというのが佐々木店主の信条である。
「15年前、銀座には8軒の焼肉店があった。今残っているのは2軒だけ。
開店してすぐに閉店、また、出店を繰り返して、現在、30軒近くある。本物の『松阪牛』を提供できる店は少ない」と自信を持つ。
「銀座」と 「松阪牛」にこだわる佐々木店主の焼肉商法は健在である。
上妻英夫