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<事例―20 アイロボット社のルンバ(B2C)> 人の手を煩わせることなく、ロボットに掃除をさせるという画期的な発想で新市場の創造に成功した・・・それがアイロボット社のルンバだ

酒井光雄 成功事例に学ぶ繁栄企業のブランド戦略

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●市場が成熟するとコモディティ化し、市場の魅力は低下する
 
 日本の家電メーカーは一時期世界を席巻し、その地位は不動に見えた。市場が成長期にある時はどのメーカーも積極的に技術開発や使い勝手の向上に取組み、魅力的な新製品が次々に登場する。
 
 だが市場が成熟期に入ると、新製品開発に代表される市場を活性化するメーカーの取組み意欲は停滞を始める。さらに安価なPB製品が店頭に出回るようになると、市場は価格の安さで選ばれるコモディティ化が加速する。
 
 掃除機の市場も成熟期に入り、国産メーカーから投入される新製品は既存製品と代わり映えしない傾向が続いた。こうした中でイギリスのダイソン社がサイクロン掃除機を市場に投入し、市場は新たな動きを見せる。
 
 強力な吸引力を売り物にしたサイクロン掃除機だが、機能や性能は既存製品の改良改善型であり、使用方法も従来同様に人が手に持って掃除することに変りはなかった。
 
●ロボットが掃除するという製品コンセプト
 
 そこに家電メーカーにはなかった発想で、画期的な掃除機が登場する。それがルンバだ。ルンバを製造するアイロボット社は、アフガニスタンで地面や洞窟に隠された爆弾を除去するロボットや東日本大震災で被災した福島第一原子力発電所で稼動している多目的作業用ロボットなどを手掛けている企業だ。
 
 同社は「退屈、不衛生、そして危険な仕事はたくさんあるが、こうした仕事から人間を解放したい」という理念の下、多様なロボットを開発してきた。そのひとつが、人工知能を搭載した掃除機のルンバだ。ルンバは人の手を介さず自動で動き、掃除が必要なところを動き回り、ゴミがあればそこに留まって掃除する。一度に3つの動作を行う3段階クリーニングシステムにより、ゴミの除去率は99.1%といわれる。
 
 ルンバは当初「掃除するロボット」という位置付けだったが、生活者に理解されにくいと判断して「自動掃除機」にコミュニケーションコンセプトが変更された。
 
 ルンバは30代を中心とした共働き夫婦、部屋毎に掃除機のコンセントを差し替えることに肉体的負担を感じる70代の高齢者を中心に顧客層が拡大する。買い替え需要を想定した既存掃除機とは異なり、所有している掃除機と併用する需要をルンバは創造している。
 
 同社では日本のユーザーの声を取り入れて改良改善を推進する体制を取っている。「日本の厳しい要求水準を満たした製品を出せば、全世界で売れる」と同社が認識していることがわかる。
 
 
<アイロボット社のルンバの事例に学ぶこと>
 共働き夫婦は掃除する時間がなく、高齢者は重い掃除機を物入れから取り出し、掃除する部屋を移動する度にかがみながらコンセントを差し替える手間が存在した。
 自分で掃除するルンバは、こうした潜在需要を顕在化させた。またルンバは所有する掃除機と併用するという新市場を創造し、お金で「時間」と「手間」を買える人たちが主要購入層になっている。
 画期的な製品として誕生したルンバは、掃除ロボットという新たな市場とカテゴリーブランドを併せて獲得し、トップメーカーになった。
 
 
 
 
 
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