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<事例―21 森永製菓のハイチュウ(B2C)> 日本でロングセラーだった商品が、ひとりの日本人メジャーリーガーによってアメリカ市場の拡大に成功した・・・それが森永製菓のハイチュウだ

酒井光雄 成功事例に学ぶ繁栄企業のブランド戦略

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●アメリカの菓子市場は、日本市場のおよそ4倍の規模
 
 全米菓子協会(National Confectioners Association 略してNCA)の調査によると、アメリカの菓子市場は2013年時点で約336億ドル(日本円で約4,1兆円)、チョコレート菓子を除く菓子とガムの市場規模だけみても約130億ドル(約1兆5990億円)ある。
 
 日本では飴菓子の市場規模は2013年で約2,390億円、ガムは約1,220億円で合計して約3,600億円という市場で、アメリカは日本のおよそ4倍の市場規模を誇る。
 
 そんなアメリカだがガムの市場は衰退を始め、2009年から2013年にかけて1割程度売上げが減少している。ガムと対照的に市場を伸ばしているのがキャンディーやタブレット菓子だ。
 
 
●メジャーリーガーに支持されたきっかけとその後の経緯
 
 MLB(メジャーリーグベースボール)のテレビ中継を見ていると、選手たちが口を動かしている場面をよく目にする。かつてはガムだったが、現在では日本製のお菓子がここで台頭している。それが森永製菓のハイチュウだ。
 
 ハイチュウがMLBの選手たちに愛用されるようになったきっかけは、ボストン・レッドソックスの田澤純一投手がブルペンに持参するブルペンバッグの中にハイチュウを入れて、仲間に配ったことに始まる。これがきっかけで選手たちに大評判になり、是非欲しいという声が広がった。
 
 当時、森永製菓の販路は大都市部の日系スーパーやアジア系スーパーに限られており、ハイチュウの入手は容易ではなかった。そこで球団を通じてアメリカ森永(2008年に販社を設立していた)に直接購入できないか打診したところ、森永製菓はサンプル提供を快諾する。
 
 森永製菓は選手だけでなく球団職員にもサンプルを大量に提供し、ボストン・レッドソックスの関係者には大勢のファンが誕生することになる。同社はこれをきっかけにボストン・レッドソックスとスポンサー契約を結び、選手がインタビューを受ける際にはハイチュウのロゴ入りTシャツを着て登場するまでになった。また同球団のファンのためにもサンプリングを定期的に行い、ハイチュウ好きを拡大させている。
 
 同社はボストン・レッドソックスに続きシカゴ・カブスやミネソタ・ツインズともスポンサー契約を行い、さらにNBA(北米プロバスケットボールリーグ)のニューヨーク・ニックスとも契約を結んでいる。
 
 こうしたマーケティング施策により売上げが拡大したことにより、同社はノースカロライナ州に工場を立ち上げ、現地生産を2015年の夏から開始する。現地生産は輸送コストが減り利益率が向上するだけなく、アメリカに最適なフレーバー開発など地元に対応した(ローカライゼーション)商品開発が可能になる。
 
 日本と違い、アメリカではスポーツが商品に与える影響は極めて大きい。それゆえに多くの大企業はスポンサーとして名を連ねるが、選手や関係者から商品のファンが生まれ、そこからスポンサー契約にまで進むのは稀有な事例だ。
 
 
<ハイチュウの成功事例に学ぶこと>
 
 商品の人気と市場規模は、誰がどれだけファンになってくれたかで決まる。単にスポーツに広告を投入するのでなく、選手や関係者に商品サンプルを提供し、ファンになってもらう取組みは非常に効果的だ。
 ガムは噛み終ると捨てなくてはならないが、ハイチュウは溶けてなくなる。ガムの市場が衰退しているなら、森永製菓は自社の商品に代替させるマーケティングを実践すべきだ。これに成功すれば、同社の売上げはアメリカ市場でさらに拡大することになる。
 
 
 
 
 
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