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<事例―14 一休(B2C)>あえて上質な企業と顧客を狙った・・それが一休だ

酒井光雄 成功事例に学ぶ繁栄企業のブランド戦略

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●一休が登場する業界の背景
 日本のシティホテルは「宿泊」「料飲(レストランやバー)」「コンベンション(企業の宴会や学会の催しなど)」「冠婚葬祭(結婚式やお別れ会など)」という4つの事業から収益を上げている。
 
 平日のシティホテルの主要顧客はビジネスパーソンで、週末は婚礼顧客や個人顧客だ。ビジネスユースは景気に大きく左右され、景気が後退すると需要が落込むため、経営は大きな影響を受ける。さらにホテルが抱える大きな問題が突発的な理由で生じるのが「キャンセル」で、これも経営が不安定になる要因だ。
 
●一休のビジネスモデル
 一休は高級ホテルに限定した予約サイト「一休.com」を展開している。高級ホテルという市場に彼らが絞り込んだ理由は、品質の高い商品とサービスを扱うと「クレームが出ない」「利用金額が高い」「利益率が高い」というメリットがあるからだ。
 一休は同社ネット上での広告収入は考えず、10%の販売手数料で運営を行ない、ユーザーへのポイント還元もこの手数料の中から拠出されている。
 
 「一休.com」に商品を掲載するホテルは、自ら一休のシステムを通じて入力を行なうため、24時間随時情報が更新でき、当日にキャンセルが出ても瞬時に「一休.com」のサイトに商品情報をアップすることができる。
現在一休は高級ホテルや高級旅館の特化した「一休.com」、ワンランク上の施設の予約サイト「一休.com+(プラス)」、高級レストランの予約サイト「一休.comレストラン」、質の高いビジネスホテルの予約サイト「一休.comビジネス」、クーポンの共同購入サイト「一休マーケット」、ギフト券販売の「贈る一休」、全日空と提携した「ANA一休パック」を展開する。
 
 2013年3月期の同社の売上高は48億4700万円、営業利益16億2600万円、経常利益17億700万円、当期利益10億1400万円の実績を上げている。会員数は300万人(2012年末)で四半期毎に10万人ペースで会員が増えている(2013年現在)。契約している高級ホテルと高級旅館は2100軒を超える。
 
●一休の強み
 ①市場と顧客を絞り込んだため、ユーザーの年収が多く、会員特性に優位性がある
 楽天に代表される安さを売り物にした多くのネット通販企業もホテルや旅行を販売しているが、一休会員は安さを求める楽天などの他社ユーザーと比較して年収ベースで200万円ほど収入が多いこともあり、ネット予約であっても20万~50万円といった高額利用も少なくない。
 
 さらに一休の会員は旅慣れた人が多く、単にハイレベルの施設をリーズナブルな料金で使いたいだけでなく、「客室グレードアップ」「レイトチェックアウト」などの同社限定プランが支持されている。
 
 ②顧客単価が高い
 楽天などの安さを売り物にする宿泊予約サイトは1泊平均7~8000円だが、一休は平均2万3000円と顧客単価が高い。また一休の会員はレストランの利用時にワインなどを追加オーダーする人が多く、施設側に利益をもたらす顧客が多い。
 
 ③施設側が求める優良個人顧客
 上記の理由から、ホテルやレストランの施設側から見て、顧客になって欲しい優良個人顧客が多く、ビジネスユースのリスクを軽減できる。
 
 
<一休の事例に学ぶこと>
 ともすれば「万人を対象」に、「安さを追求」した結果、熾烈な価格競争に突き進む企業が多い。その中で一休はブランドのセオリー通り、市場と顧客、そして自社の立ち位置を絞り込み、ブランド力を向上させ、一休独自の市場を創造することに成功している。
 
 
 
 
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