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経済・株式・資産

第69話 所有不動産に仮差押・差押をされたら…(6)

あなたの会社と資産を守る一手

企業の破たんに関わっていると、どう考えても無剰余なのに税金の滞納で地方自治体から差押をされた不動産をみかける。
その多くが税金の滞納をしていたにも関わらず相談にも行かないケースだ。
もっとも、相談に行ったとしても一定期間までに支払ができなければ、やはり差押えられてしまうのだが。
 
では、地方自治体の差押さえの運用はきっちりと法律どおりに行われているのかというと、そんなことはない。
 
固定資産税の滞納を例にして書くと、
 
納期限後20日以内→督促状
 
督促後10日以内に完納していない→差押しなければいけない
 
となる。これらは地方税法371条1、373条(注1)に書かれているが、差押についてはけっして地方税法に書かれたような迅速な対応はしてこない。
自治体による違いはあるのだろうが、数ヶ月あるいは1年~2年以上経過してから差押がなされるケースが多い。
無剰余の不動産を所有している滞納者の多くが、先順位で設定されている銀行などから借りた融資も返済が遅れているのがほとんどだから、実質この差押は「無益な差押え」に該当する。
「無益な差押え」についてはここで書いたように禁止されているのだが、高松高裁の判決を引用しそれを認めてはくれない。
 
では、差押がついたままでは自治体により競売されてしまうのかというと、それはありえないのだ。
 
無剰余不動産の任意売却もできるし、じっさい数多く行われている。ただし、先に根抵当権などを設定している銀行などの債権者と差押をしている債権者の同意が必要になる。
 
この同意を得るためには、債権者側が適正な価格であると認め、同時に、納得のいく配当があるということが前提になる。この交渉は不動産屋が行うが、債務者に収入があり、かつ任意売却でも負債が残る場合、今後の返済計画の提出も求められる。
 
しかも、この状態でまったく融資への内入れ、税金の遅れながらの少額納付をしていなければ任意売却交渉のハードルが高くなる。
 
地方では競売でも高額不動産や利用方法が限定される不動産の場合、売却できない不動産があり、不買となってそのままそこを使い続けることができる例も多い。その不安定な権利関係の上でも平気というならそれでもいいのだが、自治体に少しづつでも滞納分を支払い、任意売却で不動産を売買し、印鑑代といわれる本来配当はないのだが差押を解除するためのおカネを支払ったほうのがよほどすっきりする。
 
もちろん突然任意売買の話を自治体にしても交渉は難航する。
 
融資でも税金でも、その支払いが遅れたら、債権者から逃げずに話し合いをおこない、少しでも払っていくというのが基本なのだ。
 

(注1)
 
(固定資産税に係る督促)
 
第三百七十一条 納税者が納期限までに固定資産税に係る地方団体の徴収金を完納しない場合においては、市町村の徴税吏員は、納期限後二十日以内に、督促状を発しなければならない。但し、繰上徴収をする場合においては、この限りでない。
 
2 特別の事情がある市町村においては、当該市町村の条例で前項に規定する期間と異なる期間を定めることができる。
 
(固定資産税に係る滞納処分)
 
第三百七十三条 固定資産税に係る滞納者が次の各号の一に該当するときは、市町村の徴税吏員は、当該固定資産税に係る地方団体の徴収金につき、滞納者の財産を差し押えなければならない。
一 滞納者が督促を受け、その督促状を発した日から起算して十日を経過した日までにその督促に係る固定資産税に係る地方団体の徴収金を完納しないとき。
 
二 滞納者が繰上徴収に係る告知により指定された納期限までに固定資産税に係る地方団体の徴収金を完納しないとき。
 
以上参照元
 

 

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