最近、中国経済の減速傾向が続くなか、多くの国際機関や投資家及びアナリストは、中国の地方債務問題の深刻さを指摘し、次の債務危機は中国で発生する確率が高いと予測している。中国の債務情況の実態はどうなっているか?債務危機は本当に発生するか?国内外の関心が高まっている。
中国はいったいどのぐらいの債務を抱えているか?中国の政府債務は国債、外債、地方債に分けられている。国債について、政府統計によれば、2012年末時点の残高は7兆7,565億元(1元=16.6円)で、同年DDP(51兆9,322億元)の約15%を占めている。国際的に見れば、極めて低い水準にとどまっており、国家レベルの債務危機の発生は考えにくい。
対外債務の残高は2012年末時点で7,370億ドルとなり、同年GDPの9%を占め、外貨準備高3兆3,116億ドルの22.2%に過ぎない。デフォルト(債務不履行)に陥る可能性はまずない。
にもかかわらず、なぜ多くの国際機関は中国の債務危機の発生を警告しているか?それは中国の地方債、つまり地方政府が抱える債務が問題視されているからである。
現在、中国の地方債の規模はどのぐらいあるだろうか?地方債は国債、外債と違い、公式統計がなく、その実態は誰も正確に把握することができない。国家審計署の責任者は、地方債の規模は15~18兆元になると推測しているが、項懐誠・元財務相は、20兆元超と見ている(「人民日報」海外版)。どちらも推測に過ぎない。
仮に地方債規模を20兆元超とすれば、GDPに占める割合は39%となる。国債と加算すれば、GDPに占める政府債務の割合は54%にのぼる。それでも日米欧主要国に比べ、債務率はかなり低い。現時点では債務危機が発生する確率はゼロに近いと言っていい。「次の債務危機」は中国だという国際機関の論調は「誇張的」と言わざるを得ない。
しかし、国際機関の警告に耳を傾けるところも多い。1つは中国の地方政府の融資ルートは多様化、隠ぺいの特徴を持つため、正確な債務規模は把握しにくい。実際の債務規模は20兆元より高くなっても低いことはないと見られる。
第二に、地方債急増のリスク。20兆元の地方債のうち、7割以上は金融危機以降の4年間に増加したものと見られる。このまま膨張すれば、危機発生の確率は確実に増える。
第三に、地方政府の返済能力が疑問視される。ここ数年、高度成長に伴い、中国の財政収入も二桁増加が続いている。現時点では中央政府も地方政府も債務返済能力に問題がない。懸念されるのは、これから中国経済の緩やかな減速局面に入り、政府財政収入の伸び率の鈍化が予想される。政府の債務返済能力がだんだん弱まっていくのは、誰の目から見て明白である。
第四に、地方債の多くは土地を担保とするものである。地方政府は期限通りに返済できるかどうかは、不動産価格の上昇か下落かに大きくかかわっている。仮に不動産バブルが崩壊すれば、多くの地方政府はデフォルトに陥る可能性が大きい。その際、債務危機をきっかけに、金融不安が広がるリスクは急速に高まる恐れがある。
要するに、中国には今すぐ債務危機が発生する可能性はないが、投資牽引型成長方式を是正し、地方債務規模の膨張に歯止めをかけなければ、将来的には債務危機の発生は十分有り得る。特に不動産バブルが崩壊する時、債務危機発生の確率が高い。
現在、中国政府も地方債リスクに対する危機感を強めている。5月6日、李克強首相が主催する国務院常務会議(閣僚会議)は、「地方債のリスク管理を強化する」方針を打ち出した。中国は本当に債務危機の発生を防げるか。それとも米国のサブプライム住宅ローン危機や欧州債務危機の徹を踏むか?中国債務問題の行方を注意深く見守りたい。