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経済・株式・資産

第51話 日本企業のビジネスチャンスはここにある!

中国経済の最新動向

中国共産党三中全会の「決定」を読み解く

 中国共産党第18期中央委員会第三回全体会議(以下、三中全会と略称)は11月12日に幕を閉じた。閉幕の日の夜、「三中全会」のコミュニケが発表されたが、翌13日の上海株価指数は波乱な展開となり、下げ幅が1.8%と急落した。コミュニケの内容は、国家安全委員会の設立など政治的保守志向が強く、経済改革についても抽象的な表述にとどまり、具体性が欠如すると市場に受け止められ、投資者たちは失望感を隠さなかったのである。

 ところが、その後、「改革の全面的深化における若干の重大な問題に関する中共中央の決定」の全文が発表されると、市場は失望から期待に一転し、上海株価綜合指数が急騰し、3営業日だけで4.4%も上昇している。マーケットは三中全会の「決定」を、「具体性に富む」、「30年ぶりの大改革」とポジティプに受け止め、大いに歓迎したからである。

 なぜ市場は失望から期待に転じたか? 三中全会の改革に関する決定は一体どんな具体的な内容が含まれるか? 日本企業と密接な関わりがあり、ビジネスチャンスに直結する内容は何か? 本稿は日本経済界の高い関心に応え、具体的に解説する。

 三中全会の決定は16分野に及び、合計60項目の改革案が示された。いわゆる習近平体制の国民へのマニフェストとも言える。これらの改革案は抽象的なものではなく、非常に具体的で、しかも多くの内容は国民生活と直接にかかわるものである。 そのうち、日本企業と関係がある改革案の内容は次の10項目である。

(1)私有財産権の保護
「公有財産権と同様に、非公有経済財産権(私有財産権のこと)は侵すべからず」(第5条)。言うまでもなく、中国に進出する日本企業を含む外資系企業の財産権は中国の法律で保護される。

(2)国有独占分野の改革
「国有独占分野では、政(府)企(業)分離、政(府)資(本)分離、特別許可経営、政府監督を主な内容とする改革を実施し、公共資源配置の市場化を推進する」(第7条)。鉄道、金融、通信、エネルギーなどの分野ではこれまで国有企業が独占してきた分野だが、今後は徐々に外資を含む民間資本にドアが開く。

(3)民間資本の市場参入
民間資本に対する「非合理的な規制や障壁を撤廃する」(第8条)。外資を含む民間資本の市場参入は比較的に容易になる。

(4)企業登録制度の改革
「許可制から届け制へと逐次に変更する」(第9条)。これによって、国内企業のみならず、日本企業を含む外資系企業の設立手続きが簡素化される。

(5)農村土地の市場化
「農村建設用地の譲渡、租賃、株式出資などによる市場参入を許可し、国有地と同権、同価格で扱う」(第9条)。 農村土地の市場化によって、農民の豊かさ実現が加速され、農村市場の拡大にプラスである。これは日本企業、特に自動車メーカーのビジネスチャンスの拡大を意味する。

(6)金融改革
「民間資本による中小銀行など金融機関の設立を許可する」、「為替レートと金利の市場化」を推進し、「人民元の資本勘定項目の兌換性実現を加速する」(第10条)。これは中国の金融市場の開放を意味し、日本の金融機関にとっても市場参入のチャンスが増える。

(7)都市戸籍制度の改革
「小都市の戸籍規制を完全に撤廃、中都市の戸籍規制を緩和、大都市の戸籍条件を合理的に設定」(第23条)。戸籍制度の改革によって、農民の都市部移動が一層容易になり、都市化が快速されることは間違いない。これは日本の自動車、家電、小売、物流などの産業分野にとってビジネス拡大の好機に違いない。

(8)自由貿易区の設置
上海以外に、「いくつかの条件が整う地域に自由貿易区を発展する」(第24条)。上海自由貿易区設立2ヵ月間、既に海外企業38社、国内企業1,396社が進出しており、まずまずの成果を上げている。新たな自由貿易区の設立は外資進出にとってはプラスになる。

(9)格差是正、分配改革
「高所得者の所得を調整し、低所得者の所得を増やし、中間層を拡大する」(第44条)。低所得者の所得増加と中間層の拡大は市場の拡大に繋がり、輸出依存型成長から消費牽引型成長への転換にプラス影響を与え、日本を含む外国企業のビジネスチャンスが増える。

(10)「一人子政策」の見直し
「片方が一人子である夫婦は子供2人の出産が認められる」(第46条)。一人子政策の見直しによって、今後数年間、赤ちゃんの人口数が毎年100万人以上の増加が見込まれ、紙おむつや粉ミルクなど赤ちゃん向け商品の人気化が予想される。


 三中全会の改革深化に関する決定には多くのビジネスチャンスが内包されているため、いま中国では企業経営者向け関連セミナーは人気であり、1万元(16万円相当)の入場券が売り切れるセミナーが続出している。日本企業も新たなビジネスチャンスを見逃さないように積極的に対応しなければならない。

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