前回ファミリー企業における母親の重要性について付言したが、オーナー一族の場合、たとえ専業主婦であっても妻として母としてその運営に大きな役割を果たしているのである。
更に昨今では自らがビジネスの相続人として経営にあたったり、自ら起業する女性が続出している。それに家族から多額の遺産を相続する女性、ワーキングウーマンを加えれば、、長寿でもあるこうした女性群は有望な成長資産家市場として位置づけられ、金融機関も彼等にターゲットを絞ったサービスを展開し、セミナーなども開かれている。
私は以前何回かニューヨークで開催された「女性と富」という会議に出席したが、これがなかなかおもしろかった。全米から集まった富裕層の女性が主だったが何人か海外からの参加者もあった。
特に興味深かったのが、大資産家である女性に対し司会者がいろいろ質問するというプログラムだった。そのいくつかをご紹介しよう。
ケース1:「自分のところは一時大ブームになったテレビ番組「ダラス」のファミリーのようだった。19歳で結婚した。家のビジネスのことはよく知らなかったが、ある日妹から電話があって「雑誌に自分たちのことが出ている」、と聞いて記事を読み、それで実は本当にすごい金持ちなのだと気付いた。金持ちの女性は孤独である。富が自分のものであるように思えず、ともかく圧倒されてしまう。
そんな折り、自分の家の台所で「世界で最もヘルプを必要としているのは女性とその子供たちなのに、なかなか援助の手が届かないネ」などと話していたのがきっかけとなり、そこにいた女性たちと「女性ファンド」を始めた。お金を必要としている女性に援助の手を差し伸べるファンドで、世界中にいくつもの国で女性ファンドを立ち上げた。彼女によると、100万ドル[当時のお金では1億円以上]寄付をする女性は年間40人位いるが、夫や子供の名前で寄付する場合もあるとのこと。
彼女はその会議で、本当に必要としている人の手に渡るのは寄付の30%位のみである不条理を訴えていた。
「日本では女性が一家の財布のひもを握っている場合が多い」というと、アメリカ人は一様に驚く。アメリカには伝統的にお金のことで女性を悩ませてはいけないという考えがあるし、女性にお金をマネージさせるのは男の沽券にかかわるという考えもある。だからこの女性のように世事に疎く育つのだが、やはり目覚める人はそこから立ち上がっていく。前述の女性ファンドは会議の出席者たちにもよく知られていたようで、彼女は一身に尊敬を集めていた。一般に米国の女性はお金を社会に還元するという意欲が強い。そして彼女のように富を手にしたエネルギーレベルの高い人はそれを直実に実行に移していく。
ファイナンシャルアドバイザー