インドネシア視察の際、ジャカルタ郊外にある大塚製薬のポカリスエット工場を見学し、お話を伺ってきた。
インドネシアは人口が世界4位の2億4,000万人で、その85%をイスラム教徒が占めている世界で最もイスラム教徒が多い国なので、一度に20万人が入れるASEAN最大のモスク(イスラム寺院)も街の中心地に建っているし、1日5回あるお祈りの時間になるとモスクなどからの放送も聞こえてくる。
イスラム暦でラマダン月(今年は7月20日~8月18日)には日の出から日没まで飲食をしない断食が毎年行われるが、ポカリスエットは、本来食品の売り上げが低下するこの時期に最も売れているという。
大塚製薬は1974年に現地法人のP.T.大塚インドネシアを設立して点滴用のブドウ糖などを医療施設に販売し、1989年からはポカリスエットの販売も開始した。
しかし、当初は暑くてスポーツが盛んでないインドネシアでは、スポーツドリンクの需要も少なく、それほど売れてはいなかったのだが、現地の販売員が、「暑い日中のラマダンの断食や、蚊を媒介とする熱帯病のデング熱による脱水症状の緩和には、水よりもポカリスエットが有効」と、医師や看護師を丹念に回って啓蒙活動を行った成果が出て、2004年のデング熱の大流行をきっかけに販売量が急増し、10年間で30倍の年6億本にもなった。
日本での「スポーツドリンク」という商品概念にとらわれず、イスラム教や熱帯病など、現地の文化や風土に融合した販売戦略を取ったことが成功の要因だ。
■ジャカルタの渋滞
一人当たりのGDPが3,000ドルを突破すると国民の消費生活が急速に変化し、自動車や家電などの耐久消費財や、高付加価値の商品やサービスの消費が活発になると言われているが、インドネシアは2010年に3,000ドルを突破、今年はバイクが800万台、自動車の販売が100万台を突破する勢いだ。
日本は高度経済成長期の1975年頃、中国は北京オリンピックの2008年に3,000ドルを突破しているが、1人当たりのGDPが1,000ドルから3,000ドルになるまでにかかった期間で見ると、アメリカ20年、フランス17年、西ドイツ13年、日本11年、韓国10年、インドネシア7年、中国3年と、中国に次ぐ高度成長をしていることが分かる。
しかし、その反面首都ジャカルタ市内は交通渋滞がひどく、ジャカルタ南部にあるポカリスエットの工場へは2時間を見ていたが、実際には3時間もかかってしまった。
これは地下鉄、モノレールなどの鉄道が市内に一切ないことが原因で、インドネシアの発展には、ジャカルタの渋滞問題解決が必要だと感じた。
======== DATA =========
●ポカリスエットインドネシア新工場
http://www.otsuka.co.jp/company/release/2010/0526_01.html
●ポカリスエット
http://pocarisweat.jp/