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第24回 事業再構築補助金の獲得に向けた傾向と対策

どうなる金融業界

 コロナ禍での中小企業対策として、事業再構築補助金制度はご存知だろうか?

 

 コロナによる直接、間接の影響を受けて売上減少に苦しむ中小企業、中堅企業にとっては返済不要な資金として獲得しておきたい補助金である。

 

 予算規模は令和2年度第3次補正予算として 1兆1,485億円、令和3年度補正予算でも 6,123億円を計上しており、補助金予算としては最大級だ。

 

 既に、令和3年3月の第1回公募から第4回まで終了し、現在第5回目の公募中であるが、令和4年度も募集は継続される。とは言え、応募数に対して採択数は約4割に止まるなど決して甘くはない。

 

 今回は、既に採択案件が決定した第1回~第4回の結果を踏まえて、補助金獲得に向けた傾向と対策を分析する。

 

 

制度概要

傾向と対策の前に、制度概要を確認しておく。

※ 事業再構築補助金 令和3年度補正予算の概要/中小企業庁

 

補助対象の要件は、

(1)2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前と比較して10%以上減少していること

(2)事業再構築指針に沿った事業計画を認定経営革新等支援機関と策定すること

の2点。

 

 補助内容は企業規模や申請案件によって異なるが、補助金額は 100万円~1.5億円、補助率 1/3 ~ 3/4と幅がある。

 

 新分野展開、事業転換、業種・業態転換、又は事業再編といった思い切った事業再構築策を金融機関など認定機関の支援を得て作成し、3~5年後を目途に売上拡大や生産性向上を目指すものである。

 

 

傾向と対策 

第1回~第4回公募結果から読み取れる傾向と対策のポイントは以下の3点。

 

その1. 先ずは知り、能動的に動くこと

・これまで4回の公募での応募総数は83,011件、そのうち採択を得たのは35,183件と、全国の中小企業の内わずか0.92%でしかない。応募数自体が圧倒的に少ない状況だ。

・コロナ対策の緊急融資が、日本政策金融公庫の取扱い分だけでも令和3年3月末時点で80万件を超えていたのと比較すれば、いかに少ないかが分かる。

・また、地域によってのバラつきも大きい。下図は、都道府県別の採択件数と中小企業数に占める割合を表しているが、青森県0.32%に対して京都府 1.73%と5倍以上の格差が出ている。

・これは地域による産業構造の違いもあるが、それ以上に補助金獲得に対する地域の姿勢の違いや支援機関の積極性の違いが数字に表れていると考えられる。

・いずれにしても、この事業再構築補助金制度の認知度はまだまだ低く、制度の中身を認識していない経営者も多い。先ずは経営者自身が制度の中身を知り、獲得に向けて能動的に動くことが第一歩である。

 

その2. 採択実績のある支援先の協力を得ること

・実際に応募するには、金融機関や税理士、経営コンサルなど認定支援機関によるサポートが必要となるが、どこをパートナーとして選ぶかが重要である。

・認定支援機関別採択の分布状況は下図の通りで、金融機関はじめ、税理士・会計士、商工会・商工会議所やコンサル会社、中小企業診断士など多岐に亘る。ポイントは、その支援機関にやる気とノウハウがあるかと言うことである。

・下表は採択獲得支援数上位100金融機関であるが、先ず、金融機関の大きさと採択獲得支援数とは関係ない事がよく分かる。トップの京都信用金庫は、金融機関としては決して大きくないがメガバンクや地銀大手を圧倒している。地盤の京都府だけでなく、大阪府の企業でも57件の採択を獲得しており、会社を上げて補助金獲得支援に取組んでいる事が分かる。

・京都信用金庫以外でも京都銀行、京都中央信用金庫も上位に名を連ねており、このような地域での競争が、京都府の高い採択割合につながっている。

・経営者としては、採択実績の豊富な支援機関と縁があれば協力を依頼することが、補助金獲得への近道である。縁がなければ、地元の商工会や商工会議所に相談するのが次の手だろう。商工会関係の支援実績も相応に高い。

・認定支援機関に対する報酬は、約2/3の支援者は報酬なしで取組んでいる。高額な報酬で支援を請け負う業者には要注意だ。

 

その3. 事業再構築の事例満載

・応募が少ない要因として、事業再構築の構想を描き、計画を立てなければならないというハードルがある。この補助金の主旨は、企業の新分野展開、事業転換、業種・業態転換、事業再編などを後押しする事にあり、採択獲得には実現性の高い、効果的な計画を立てる事が求められる。

・このハードルを認定支援機関と共に乗り越える必要あるが、大事なのは経営者自身が構想のアイデアをしっかりと持っておく事である。

・ここで参考になるのが、実際に採択となった3万件を超える事例である。事業再構築補助金のホームページを見ると採択事例紹介の他、採択結果として業種別に全ての案件の概要が掲載されている。

・例えば、建設業で見ると第4回公募で912件の採択事例が載っている。
その中の一つを見てみるが、かなり具体的な内容だ。

福島県白河市 株式会社白川空調システム 支援機関:常陽銀行

案件名「白河の味を家庭で」急速冷凍機の販売で地元飲食店を活性化!

案件概要「コロナ禍で落ち込んだ地元飲食店等の復興・活性化に寄与すべく、急速冷凍機の小売販売を開始する。これにより、当社は新たな収益源を確保するとともに、コロナ禍を乗り越えるための事業体制の再構築を図る。」

・多くの事例の中には、自社にも応用可能なものもきっとあるはずだ。事業再構築を思案中の経営者には参考となる情報である。

 


まだ間に合う

 現在募集中の第5回公募(3月24日締切り)は、令和3年度予算の最終回。令和4年度予算6,123億円に対しては、第6回から3回程度に分けて公募が実施される見通しである。


 まだ応募していない、或いは応募したが否決されてしまった経営者には、まだ間に合うので傾向と対策を立てて、獲得に臨んでいただきたい。

事業再構築補助金HP: https://jigyou-saikouchiku.go.jp/

事業再構築補助金 令和3年度補正予算の概要:
 file:///C:/Users/hiroh/Downloads/hosei_yosan.pdf

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