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人事・労務

第92話 仕事の成果の審査には「適正な時間内で」という前提が必要です

「賃金の誤解」

賃金管理研究所 所長 弥富拓海
http://www.chingin.jp
 
 政府の「働き方改革実現会議」は、「長時間労働を是正し、ワークライフ・バランスを実現することにより、老若男女、誰もが自分のライフステージに合わせた働き方を選択できる社会をつくっていきたい。そのためには時間当たりの生産性向上が必要だ」としました。もちろん、その先に「賃金の上昇や出生率の改善」を見据えています。
 
 小池東京都知事は、政府の「働き方改革」の趣旨を受ける形で、都庁の職員に対して、長時間労働を是正し、ライフワーク・バランスを都が率先して実現するため、午後8時での完全退庁を求めました。大変良いことだと思います。(小池知事はワークよりもライフが先としています)
 
 都の本庁職員の昨年度の残業は月平均23.5時間でしたが、年間1,000時間を超える残業を日常的にこなしている職員もいたそうです。それは月にして80時間を超える残業を繰り返していることであり、「時間外労働が1か月当たり80時間超」とは、「過労死ライン」だと厚生労働省は警告しています。
 
 原価意識の低い組織においては一人ひとりの役割責任も明確でなかったりするため、労働時間の多い少ないが評価の要素とされる傾向がありました。たとえ生産性が上がらなくても残業したほうが上司の覚えがよく、残業した分だけ収入も増えるという環境では、人はむしろ積極的に残業して当然でしょう。
 
 本来、残業とは部下の就業時間を預かる管理責任者たる直属上司の指示で必要な時だけ、36協定での労使合意を根拠に、就業規則に示された所定内勤務に加えて追加勤務する高コストな特殊勤務(割増賃金が前提)です。そしてその勤務成績(仕事品質)は直属上司に審査・確認され、明日の仕事の段取りに活かされていきます。
 
 仕事とは基本的に(A)やらないといけない重要仕事、(B)やるべき仕事、そして(C)やらなくてもいい事の3つに分けられると言われます。毎月80時間を超える残業を日常的にこなしている社員の仕事の何割が欠かせない重要仕事なのでしょうか。当人でなくてもできる仕事を多く抱え込んでいるのであれば、お客様に迷惑をかけないためにも組織として「ワークシェア」を検討すべきです。されに、明日の会議のプレゼン資料の見栄えにこだわってパワーポイントを駆使して過度な装飾に深夜まで時間をかけていたとしたら、それはやらなくていい事かもしれません。
 
 課としてやらないといけない仕事、やるべき仕事、やらなくていい事をABC分析し、判別する役割は課長の責務です。ライン管理職が常に部下の仕事の価値と進捗に注意を払っていなければ生産性は決して向上しません。少しでも手を抜くと、残業時間は増加してしまいます。
 
 残業時間の削減は、働く人に変化を求めます。今までは「長時間働き、結果が無難であれば評価された」そんな企業もありました。しかし、これからは「適正な時間内で」という前提が常に付くことになります。個人も意識して生産性の向上に取り組まなければ、上司に評価されない時代が来るのです。「仕事をやり遂げるのに時間をかけ過ぎる」「真面目だが要領が悪く、非効率だ」などと言われる人たちにとっては、厳しい時代が始まると言うことかもしれません。

 

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