menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

人事・労務

第82話 春闘集中回答 先行きの不透明感を投影

「賃金の誤解」

賃金管理研究所 所長 弥富拓海
http://www.chingin.jp
 
 第19回経済財政諮問会議で安倍総理は「名目GDPを増加させていくためには、賃金上昇等による継続的な好循環の確立が必要であり、同時に最低賃金もこれにふさわしいものとしなければならない。そのためには、最低賃金は年率3%程度を目安として引き上げていくことが重要です。これにより、最低賃金の全国加重平均が1000円となることを目指します。」と発言しました。このような政府方針のもと2016年春季労使交渉はスタートしました。
 しかし、業績改善への期待から満額回答が相次いだ昨年とは様変わり。今年の月例給与に関する回答で、多くが3年連続のベースアップ(ベア)は実現したものの、金額では前年を大幅に割り込むなど、上げ幅は低調な結果となっています。
 年明け以降の株安や円高といった経営環境の悪化に加えて、先行きへの不透明感が春闘相場を冷す格好となりました。デフレ脱却と経済の好循環に向けて安倍晋三政権が経済界に強く要請した「賃上げ圧力」にも、月例賃金のベアに限って言えば限界があったのかもしれません。
 相場をけん引するトヨタ自動車のベア交渉は、前年実績を2500円下回る月額1500円で妥結しました。トヨタの今年3月期連結純利益は、過去最高になると予想されています。にもかかわらず、ベア額は業績の振るわなかった企業も多い電機大手と同額でした。グローバルに事業展開するトヨタの慎重な姿勢は、景気の先行きに対する懸念を印象付けます。
 日本銀行によるマイナス金利政策の導入を受ける形で、収益環境の悪化を警戒し、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほフィナンシャルグループの各労働組合がベースアップの要求を見送る方針を固めました。
 一方、今春闘で労組側が非正規社員を含む賃金の底上げと格差是正を真正面に掲げ、経営側も非正規社員の時給引き上げに応じたことは注目に値します。トヨタは非正規の期間従業員の日給を、労組側の要求通り150円引き上げると回答。非正規社員の待遇改善の動きが今春闘を特徴付けています。
 大手の集中回答を経て、慢性的な人不足が懸念される中小・地場企業の給与改定はこれから本番を迎えます。
 そうした中で異色の事例を最後に紹介したいと思います。味の素は、月額給与を一律に底上げするベースアップを2年連続で実施してきましたが、2016年の春闘交渉では、労働組合側がワークライフバランスの推進のため、労働時間の短縮を求めたことを受けて、所定労働時間を1日20分短縮すると回答しました。
 労働時間を1日20分短縮しながら基本給を維持することは、実質的には月1万4000円以上のベアに相当すると試算しています。現在の所定労働時間7時間35分を、2017年4月からは7時間15分にする。対象は管理職を除く社員約2500人で、1人当たり年間80時間の短縮になるそうです。同社は子育て中の人や外国人、障害者らが働きやすい環境を整え、多様な人材の確保に役立てたいと説明。一日の終業時刻を早める方向で調整するとのことです。

 

第81話 2016年春季労使交渉と賃上げ動向前のページ

第83話 嘱託再雇用か定年延長か、高年齢者の雇用と給料を考える次のページ

関連記事

  1. 第95話 管理監督職・2つの重要仕事

  2. 第98話 労働時間の適正な把握のために講ずべき措置・ガイドライン

  3. 第125話 今後の賃金動向と中小企業の賃金政策を考える(3)

最新の経営コラム

  1. 第183話 ボタンを掛け違えたM&A

  2. 第153話 さとう@川崎市☆新百合ヶ丘 ~地域密着でがんばる凄い海鮮ちらしの寿司屋

  3. 第195回 BCP(ビジネス・コンティニュー・プラン=事業継続計画)について

アクセスランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 人事・労務

    第113話 モデル本給表が大幅なベースアップを必要とする理由
  2. 後継者

    第6回 社会貢献と二世教育
  3. 教養

    第58回 『人に心を開いてもらいたい時、私が必ずやること、やらないこと。』 (著...
  4. キーワード

    第24回 ティッピング・ポイント
  5. 経済・株式・資産

    第47回「新成長戦略3 先端産業分野(航空宇宙・ロボット・バイオ)」
keyboard_arrow_up