中国の名目GDPは、実質成長率、インフレ率、為替レートなど3つの要素によって、2017年に1兆ドル超を増加し12兆5000億ドル前後に達する見通しである。1年間の増加分だけで、2016年世界GDPランキング12位のロシア(1兆2831億ドル)に匹敵することになる。
実質GDP成長率は6.8%
2017年第4四半期の成長率はまだ発表されていないが、6.8%になる見通しである。1Q6.9%、2Q6.9%、3Q6.8%、4Q6.8%。通年は6.8%になり、昨年の6.7%より僅かながら0.1ポイント増加することになる。
IMFが発表した「2017年世界経済見通し(10月時点)」によれば、今年中国GDP成長率を6.8%と予測、GDP総額が11兆9375億ドルと推計。しかし、IMFのGDP推計値は明らかに過小評価で、中国経済の実態と大きくかけ離れている。インフレ率と人民元高などの要素が推計値に反映されなかったからだ。
消費者物価上昇率は1.5%
6.8%という成長率は物価上昇を除外する実質成長率だが、各国が発表するGDPは実際、物価要素を入れる名目GDPである。今年の中国インフレ率は通年平均1.5%と予測される。従って、中国名目GDPも1.5%を加算しなければならない。
また、ドルベースの中国名目GDPの推計は為替レートの変化を考慮しなければならない。しかし、10月時点のIMFによる中国のGDP推計値はこの1年間の為替変動を反映していない。
人民元対ドルレートが4%超上昇
ドルベースの名目GDPにとって、為替はマジックのような存在だ。例えば、2011年中国の経済成長率は9.5%だったのに、IMFが発表したドルベースの中国名目GDPが7兆5221億ドルで前年比23.9%増となっている。同年の消費者物価指数(インフレ率)5.4%、人民元対ドルレート上昇率4.5%などという要素を加算した結果である。
逆に、たとえ名目GDPが大幅に増加しても、その年の対ドルレートは大幅な人民元安となれば、ドルベースの名目GDPの増加は帳消しとなる。2016年はその典型的な事例と言える。
2016年、中国のGDP成長率は6.7%、通年インフレが2%、人民元ベースの名目GDPは前年比8%増の74兆4127億元となった。ところが、IMFによるドルベースの中国GDPは11兆2321億ドルとなり、前年の11兆2262億ドルに比べれば、ほとんど変わらなかった。一体なぜか?人民元が対ドルレートでは1年間で6.6%も安くなったからだ。
今年はどうだ?12月8日時点で、人民元対ドルレートは昨年末時点に比べれば4.5上昇した。通年では4%以上の元高は、ほぼ間違いがない。よって、2017年ドルベースの中国GDPの増加分は下記の通りに算出されることになる。
11兆2321億ドル×(6.8%+1.5%+4%)=1兆3590億ドル
この計算通りになれば、2017年の中国名目GDP総額も12兆5000億ドル前後に上り、約5兆ドルの日本の2.5倍になる。2010年に経済規模で日中逆転が起き、7年後に2.5倍の開きが出来上がってしまう。中国台頭の速さと凄さが浮き彫りになり、日本はどう対応すれば良いかが安倍政権の喫緊の課題となろう。