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マネジメント

第六十七話 「間違ったことをするな」(ブレイン)

社長の口ぐせ経営哲学

「価格決定権」を持つ企業は強い。自社の商品やサービスを自社の戦略で価格を決める会社は成功する可能性が高い。
メール配信を専業とする業界の中で、今、注目を集めているのが成長力の高いブレイン株式会社(東京都渋谷区)である。
26歳の若さで起業した天毛伸一社長が率いるIT企業である。
創業9年の若い企業だが、実績、成長カーブは着実に上向きである。


しかし、創業当時から売上げが順調だったわけではない。
ネット時代といっても、メール配信の業務を各企業がすんなりと受け入れてもらえるほど簡単ではなかった。
創業して3年間、「思うように売上げが伸びなかった」という。
試行錯誤、苦肉の策の上から、思い切った低価格戦略に踏み切った。
自社のメール配信 システム「ブレインメール」を“費用対機能”を明確にして、
ベーシックでシンプルなメール配信システムを打ち出した。


社運をかけて勝負に出た。メール配信システムの商品価格を相場の四分の一に引き下げたところ、動き出した。
受注の電話が鳴り止まなかったという。以来、 ヒットを続け、現在、導入実績3000社の顧客を確保し続けている。
3年前で1000社、1年前で2000社、今年に入って3000社という伸び方である。
「目標は三年以内で1万社を目指す」(天毛社長)という。


同社のメール配信システムは月額2000円(3000人まで配信)、配信する回数は制限がない。
「とにかく安いコストが顧客を増やしている理由です。効果測定など高価格戦略の会社と基本の機能を持つ
低価格戦略の二極化が起きています。もちろん、わが社は低価格戦力だダントツの顧客を確保しています。
また、 伸びているもう一つの理由が“信用力”です」(天毛社長)


同社は「低価格」に加えて、「高品質サービス」「情報セキュリティ」のノウハウを持っている。
今、新規事業として大手数社の寡占状態のコールセンター業界に価格破壊を仕掛けている。
マニラと上海に拠点を持ち、従来の料金の約三分の一の価格帯を打ち出している。
若い社員に対して「間違ったことをするな」「筋の通らないことをするな」と檄を飛ばしている。


創業当時に実績を伸ばせず、苦しんだ経験が着実な経営哲学を持つようになっている。
海外での新規事業も結果を早く求めない、という方針である。
“一コール、100円”という低価格路線を打ち出しているが、最近、採算ベースに乗り始めている。
“苦労”が「着実」「堅実」という経営方針を生んでいる。
独自の戦略を持つことが成長する企業に育っていることを教えている。

 

                                                             上妻英夫

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