都内で飲食店を経営する山本社長が、ある従業員の件で賛多弁護士に相談に来られました。山本社長によると、ある男性従業員が、育休を取得しようとしているとのことですが…。
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山本社長:先生、今日は、従業員のことでちょっと相談がありまして。
賛多弁護士:どうされましたか?
山本社長:ある男性従業員の妻が本年10月に出産する予定のようです。この従業員は、育児にとても熱心で、育児休業を取得する予定です。時代も変わりましたね。
賛多弁護士:そうですね。ちなみに、その従業員はいつから休業を取得する意向なのですか?
山本社長:まずは、妻の出産直後に4週間程度、休業を取得する予定みたいですよ。
賛多弁護士:出産直後から休業するということは、その男性従業員は、出生時育児休業、いわゆる産後パパ育休を取得するのですね。
山本社長:出生時育児休業、ですか?
賛多弁護士:そうです。今回の育児・介護休業法の改正により、男性従業員の育児休業促進のため、子の出生後8週間以内に4週間まで出生時育児休業(いわゆる産後パパ育休)を取得することができるようになりました。これは、2回に分割して取得が可能で、育児休業とは別に取得できます。
山本社長:なるほど。出生時育児休業についてはよく分かりました。ところで、その従業員は、出生時育児休業に加えて、子供が1歳になるまで育児休業を取得する予定です。
賛多弁護士:育児参加に積極的で素晴らしいですね。
山本社長:もちろんです。会社としても、男性従業員が育児休業を取得することは大歓迎です。ただ、会社としては、その従業員に、育児休業中に、どうしても参加してほしい研修があるのですが…。
賛多弁護士:なるほど。社長は、その従業員に対して、その研修に参加させたいということは伝えたのですか?
山本社長:伝えました。そうしたところ、その従業員もその研修にはどうしても参加したいということでした。研修終了後は再び育児休業を取得したいとのことです。いったん取得した育児休業を終了して、業務に復帰し、その後に再び育児休業をとる、ということは可能でしょうか。最近、育児・介護休業法が改正されたと聞いていたので、気になりまして…。
賛多弁護士:まさに、その点も、先ほど申し上げました出生時育児休業とともに、今回の育児・介護休業法の改正のポイントの1つになります。これまでと異なり、育児休業について、分割して2回まで取得することが可能となりました。
山本社長:そうしますと、この従業員は、育児休業をいったん終了して、研修に参加、研修終了後に再度育児休業を取得することができるのですね。
賛多弁護士:そのとおりです。
山本社長:よく分かりました。ところで、改正された育児・介護休業法は、いつから施行されるのですか。
賛多弁護士:今回の育児・介護休業法の改正事項は多岐にわたり、改正事項によって施行時期は異なります。このうち、今お話しした、出生時育児休業(いわゆる産後パパ育休)と育児休業の分割取得に関する改正事項は、本年(2022年)10月より施行となります。
山本社長:そうなんですか。知りませんでした。男性従業員は、育児休業を分割取得することができるので、ちょうどよいタイミングでした。
賛多弁護士:ちなみに、本年4月より施行された法改正事項として、①育児休業の申出・取得を円滑にするための雇用環境の整備に関する措置、②妊娠・出産(本人または配偶者)の申出をした労働者に対して事業主から個別の制度周知及び休業の取得意向の確認のための措置を講ずることが、事業主に義務付けられました。これは、以前に、社長にご説明したことがありますよ(第75回参照)。
山本社長:そうでした、そうでした。すでに、本年4月から施行された事項についても、もう1度、勉強してみます。
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昨年、出産・育児等による労働者の離職を防ぎ、希望に応じて男女ともに仕事と育児等を両立できるようにすることを目的として、育児・介護休業法が改正されました。いくつかの改正項目がありますが、このうち、本年10月より施行される改正事項は以下のとおりです。
〇出生時育児休業(産後パパ育休)の創設
子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能
①休業の申出期限は原則休業の2週間前まで(現行の1か月前よりも短縮)
②分割して取得できる回数は2回
③労使協定を締結している場合、労働者と会社との合意により事前に調整した上で休業中に就業することが可能
〇育児休業の分割取得
育児休業(出生時育児休業を除く)について分割して2回まで取得することが可能
※本年4月より施行されている改正事項は第75回(第75回 『有期雇用従業者は育児休業取得できるの?!』 | 経営コラム「JMCA web+」- 日本経営合理化協会)をご参照ください。
執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 渡邉宏毅