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社長業

Vol.124 意識を切り替える能力と条件

作間信司の経営無形庵(けいえいむぎょうあん)

 柴田励司先生という先生にお会いして「組織・人財育成」のテーマでいろいろお話を伺ってきた。もともとマーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティングの日本法人社長を7年やられて、CAD CENTERという会社の再建をこの一年間で実現された、すごい人である。
 
 マーサーも全世界で16000名のスタッフを擁する最大規模の組織コンサルティング会社であり、バリバリの外資系である。
 
 成果主義、超切れ者、英語ペラペラ・・・そしてポジティブシンキング(プラス発想)の方だと想像していたが、結論は、まったく逆であった。
 
 仕事をしていると、「失敗も多いし」「異文化の中で意見が通らないし」「誤解もいっぱいある」当然、落ち込む。本人は「へこむ」と言う表現をしていたが、へこんだ後、すぐに立ち直る能力も社長にとって必須の能力だと。
 
 判っていても、これがなかなかできない。
 
柴田先生が社長時代に、何をして、立ち直ったかを聞いてみた。
 
1. 時間があれば、昼間でもプールに飛び込んで、
  上がってきたら別人になる。
 
2. 公園を散歩して、新鮮な空気を吸って、悩んだことを断ち切る。
 
3.心の中で、「意識の壁」と大きな声で叫んで、
  へこんだ気持ちを壁の向こうに押し込んで、気を切り替える。
 
 長年やっていると、慣れてきて「意識の壁」と叫ばなくても何とかなってきた、と。悩みの元や、へこみの原因を、いくら考えても好転しないのも事実だが、そう簡単に割り切って、新たな一歩が踏み出せないのも人間だ。
 
 その時に、ビジョンに向かってひたすらすすんでいる自分を思い出したり、本当に喜んでくれている「お客様の顔」を思い出すことが、非常に重要になってくる。
 
 ただ、人はそんなに合理的にできていなくて、「何かのカタチ」を繰り返すことで、気持ちが高揚し、へこんだ状況から脱出するようだ。
 
 広島のHさんは、歩く。それも大またで両手を大きく振って、ひたすら汗を流すほど歩く。そのうち元気になる。と教わった。
 
 柴田さんには柴田さんの、HさんにはHさんのやり方がある。ある女性シンガーのCDをガンガンに大きくして聞いて元気を取り戻す人も知っている。
 
 社長が、ずっと「へこんで」いては、この厳しい環境は乗り切れない。どんなことでも翌日まで持ち越さないことが、世界で戦う社長の能力だと柴田先生は思い知らされたとのことである。
 
 しかし、いきなりやると、手痛い失敗をする。若いうちからトレーニングをやっておかないとできるものではない。次世代のリーダーを育てるときにも必要なことだ。
 
 創業者は、そんなことも考えずに頑張ってこれたが、みんなができるわけではない。
 
 みんな、自分なりの「へこみからの脱出法」を人知れず編み出して欲しい。

 

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