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採用・法律

第119回 フリーランス新法とは?

中小企業の新たな法律リスク

2024年に「フリーランス新法」が試行されます!

フリーランスとの取引がある会社を経営する田中社長は、賛多弁護士のもとを訪れました。

 

田中社長:少し前ですが、新聞や雑誌等の記事で「フリーランス新法」が2024年中に施行されるということを知りました。

 

賛多弁護士:はい、そのとおりです。フリーランス新法の正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」といいます。フリーランス新法は、2023年5月12日に公布され、2024年11月頃までに施行される予定です。

 

田中社長:フリーランス新法がフリーランスとの取引を適正化するための法律であることは、その名称からなんとなく分かりますが、具体的にはどのような内容の法律なのでしょうか。

 

賛多弁護士:近年、働き方が多様化し、フリーカメラマンやプログラマー等の職業で、フリーランスという働き方が普及しています。そのため、多様な働き方をそのニーズに応じて柔軟に選択できる環境を整備することが重要となっています。

一方で、実態調査において、フリーランスと取引先との関係で、報酬不払いや支払遅延などの支払いに関するトラブルのほか、ハラスメントなどの就業環境に関するトラブルが多く発生していました。

 

田中社長:フリーランスの方は弱い立場に置かれやすいんですね。

 

賛多弁護士:そのとおりです。そこで、フリーランス新法は、フリーランスの方が安心して働ける環境を整備するため、「フリーランス」と「発注事業者」との間の「業務委託」取引について、①取引の適正化と、②就業環境の整備を図るための規定を定めました。

 

※フリーランス新法では、フリーランスは「特定受託事業者」、発注事業者は「業務委託事業者」や「特定業務委託事業者」とされていますが、本コラムでは、それぞれ「フリーランス」、「発注事業者」と表現しています。正確な定義については、この法律の条文をご確認ください。

 

田中社長:フリーランスや発注事業者とは、どのようなものでしょうか。

 

賛多弁護士:フリーランスとは、業務委託の相手方である事業者であって従業員を使用しないものをいいます。一般的にフリーランスと呼ばれる方には、「従業員を雇っている」「消費者を相手に取引をしている」といった方も含まれますが、そのようなフリーランスは、この法律におけるフリーランスには該当しません。

発注事業者とは、フリーランスに業務委託をする事業者であって従業員を使用するものをいいます。

 

田中社長:従業員を雇っている企業が零細事業者に業務を委託する場合には、多くの場合でフリーランス新法の適用がありそうですね。

 

賛多弁護士:先ほど説明したとおり、フリーランスとは、業務委託の相手方である事業者であって従業員を使用しないものをいいますが、業務委託の相手方である事業者が従業員を使用しないフリーランスに該当するかを判断することが容易ではない場合があるので、零細事業者に業務を委託する場合には、フリーランス新法の適用があるものとして取引をすることが望ましいです。

 

田中社長:先ほど、フリーランス新法には、取引の適正化を図るための規定が定められているとおっしゃっていて、これは下請法と似ているように思いますが。フリーランス新法と下請法とでは何が異なるのですか。

 

賛多弁護士:いい質問ですね。フリーランス新法と下請法の大きな違いとして、保護対象に資本金による制限があるかどうかという点が挙げられます。下請法は、親事業者及び下請事業者にそれぞれ資金額の定めがありますが、フリーランス新法では、資本金による制限がありません。

また、規制対象取引についても、下請法は、特定の類型の委託取引のみに限定されていますが、フリーランス新法では、下請法よりも広範な取引が規制の対象になっています。

したがって、フリーランス新法のほうが下請法よりも保護される取引の対象が広いといえます。

 

なお、フリーランス新法と下請法では、「取引の適正化に関する規定」について共通する部分が多くあります。ただ、「就業環境の整備に関する規定」は下請法には規定されておらず、フリーランス新法にのみ規定されています。この点について、フリーランス新法と下請法の違いを表でまとめる以下のとおりです。

田中社長:フリーランス新法と下請法の違いについてよくわかりました。ちなみに、フリーランス新法の規定に違反してしまった場合にはどうなりますか。

 

賛多弁護士:行政機関が、違反の内容に応じて、発注事業者に対し、違反行為について助言・指導、報告徴収・立入検査、勧告、公表、命令をすることがあります。そして、命令に違反した場合や検査を拒否した場合等には、50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

 

田中社長:そうなんですね。よくわかりました。当社は、資本金の額が小さく下請法の適用がありませんでしたが、フリーランスの方との取引があるので、取引の内容を見直して、フリーランス新法に対応できる体制を整えるようにします。

 

賛多弁護士:今後規制が追加される可能性もあるので、その際はお知らせしますね。

 

田中社長:ありがとうございます。引き続きよろしくお願いいたします。

 

※参照資料

・厚生労働省「フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00002.html

 

・公正取引委員会「下請法の概要」

https://www.jftc.go.jp/shitauke/shitaukegaiyo/gaiyo.html

 

執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 橋本充人

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