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製造業

第185号 コスト第一主義の危険

柿内幸夫─社長のための現場改善

 街で見かけた“ぜんざい”を売っているお店の看板です。このお店がよそよりずーっと安い価格で売っても大丈夫な理由が書いてあります。

 一つは自家製あんだから(内製化)、二つは注文を受けてから作るから(受注生産)。小さなお店でしたが、モノづくりの思想が根付いているのだと感心しました。

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 さて、本題に入ります。日々現場を歩いていると、いろいろな場面に遭遇します。例えば先日、蛍光灯が切れていて、とても暗いところで仕事をしている人を見かけました。

 早く交換すればいいと思うのですが、なぜか交換しないで我慢しています。もしご家庭で、自分の子供が本を読んでいたら、すぐに「目を悪くするから、そんな暗いところで本を読んではいけません!」と注意するような暗さでした。

 仕事をしていた女性に「暗くありませんか?」と聞くと、「もう少し明るい方がいいけれど、もう慣れてしまったからこれでも大丈夫」といった答が返ってきました。

 横にいた社長に「これは社長の指示ですか?」と聞くと、「とんでもない、早く蛍光灯を新しいものに換えないと、いつまでもこんな暗いところで仕事をしていたら、そのうち不良が出てしまうかもしれない。そうなったら大変です。それにこの暗さだと、やはり眼が疲れるでしょう」といった答が返ってきました。

 実はこのようなことにしばしば出会うのですが、ほとんど、同じようなレスポンスが返ってくるのです。このギャップは一体どういうことでしょうか?社長と従業員の双方からそれぞれの考えを聞いてみます。

 まず社長の意見です。「普段から節約をしてくださいとお願いしています。誰もいないところを照らして明るくする必要はないから不要な電気はこまめに消すように指示しています。しかしだからといって、あのような暗いところで仕事をして欲しいということではありません」。

 次に、暗いところで働いていた担当者の意見です。この方は経験が一年強のパートタイマーでした。「この蛍光灯は少し前に切れました。直して欲しいとも思いましたが、このくらいの暗さなら何とか頑張れば大丈夫なので我慢していました。

 もしあと一本の蛍光灯が切れたらお願いするつもりでした。この時期は少しでも節約が必要だと思いますから、このままでいいです」。

 いかがでしょうか、どの会社においても同じような状況が起きているかもしれませんね。さて、ここで双方の意見を聞いて分かることですが、それぞれ二人とも筋が通っています。ただし蛍光灯をどうするかについてはお互いに「直すべき」と「直さないでいい」との逆の結果を出しています。

 さて、ではこの場合どちらの答を採用するべきでしょうか?私の答は社長の意見である「すぐ直す」です。理由は簡単。モノづくりにおいて、「安全と品質」は「コスト」より優先されるべきだからです。

 「安全第一」とか「品質第一」という言葉はよく聞きますが、「コスト第一」という言葉は聞いたことがないと思います。経営者にとってはこの二つの第一はその通りだと納得がいくと思いますが、担当者の方々は、ついついコストや納期に目が行ってしまいます。

 ですから、少々危険なことでも自分で手を出して怪我をしてしまったり、出荷に間に合わないと大変だと、慌てて仕事をして不良品を作ってしまったりするのです。これらを頭から責めるわけにもいかないです。何しろ真面目にやっているからこそ、招いた事態ということが多いのですから。

 しかし、やはり安全と品質は第一ですから、問題を発生させるわけにはいきません。今回の照明の問題も、後回しにしてはいけないのです。

 では、どうすればこのようなことを止められるか?私の答はやはりトップの方々が現場で現物を前にして、皆さんの働く様子をこれまで以上に見ることだと思います。

 そして笑顔で挨拶を交わしながら真面目な雑談をして、会話の中からいろいろな問題の存在や改善のヒントをつかむことだと思います。ここから大きな改善が生まれることは大変に多いのです。

 ちなみに、この会社ではこれがきっかけで電気の照明の使い方のムダが議論になり、天井の照明の配置に合わせた組み立てラインの並べ替えや、ムダな面積を見つけて作業場のコンパクト化が実現し、生産性や面積効率の面で大きな成果を生み出す結果となりました。

 経営者や管理者の皆様にお願いします。これから暑くなってきます。いろいろな問題を事前に把握して改善しておくことが必要です。現場の状況を改めてご自分の足と眼でしっかりとご覧になってください。 

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copyright yukichi

※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。etsuko@jmca.net

 

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