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第127回『リ・アルティジャーニ』(著:ヤマザキマリ)

眼と耳で楽しむ読書術

まだまだ暑いものの、空気の中に秋を感じるようになってきました。

まもなく読書の秋(芸術の秋)を迎えるにあたり、おすすめの一冊を紹介します。

『リ・アルティジャーニ』(著:ヤマザキマリ)

リ・アルティジャーニ/amazonへ

です。

このタイトル、聞きなれない言葉かと思いますが、イタリア語で”職人”を表すもの。

レオナルド・ダ・ヴィンチを始め、今では”画家”として知られる巨匠たちも、15世紀のルネサンス期においては、まだ”職人”でした。

この”職人”の仕組み、いわば企業の走りの1つ、といっても過言ではありません。

巨匠が工房を持ち、そこに職人たる絵師たちが集まってくる。
仕事を受注し、組織でこなしながらも、同時に若手の技能向上、人材育成も行う。
中には、自分の工房を持つべく、巣立っていく者も出てくる。
さらに、仕事を請け負う際も、単なる口約束ではなく、細かい注文や必要経費、納期に遅れた際の罰則を始め、契約書としてきちんと明文化されている。
(当時の契約書が数多く現存しています)

つまり、現代の企業と通じるものが、ここにあります。
とりわけ、中小零細企業においては、昔のイタリアと何ら変わらぬ形で存在しているところもあり、
これからの会社の在り方を考える上でも大きな意味を持つ、と言えます。

本書は、そんなルネサンス期イタリアの”職人”たちに着目した、稀有なる一冊。

著者のヤマザキマリ氏は、大ヒット作『テルマエ・ロマエ』で知られる漫画家ですが、
ユニークな経歴を持つことでも有名。
17歳にして単身イタリアに渡り芸術の都フィレンツェの国立アカデミア美術学院で美術史、油絵を専攻。
現地での芸術修行は11年に及び、今も日本とイタリアを行き来しながら、幅広く活躍しています。

一般的な美術の専門家とは異なる独自の視点から、”職人”を通じて、
イタリア・ルネサンス期を紐解いていくところが、本書最大の持ち味。

全編カラーの漫画仕立てになっていますので、美術書などを読むだけでは、
なかなかイメージしづらいルネサンス期イタリアが、手に取るようにイメージできます。
これは大きなメリット!

フィレンツェ篇、ナポリ篇、ヴェネツィア篇の3つの章において、
当時の史料に基づいて、非常に細密に再現されていて、1つ1つが実に見応えあり!

レオナルド・ダ・ヴィンチ、ボッティチェリといった有名どころから、
知られざる巨匠まで、登場人物も多彩。
雑学的な楽しみ方もできるのが嬉しいところです。

また、巻末には東京造形大学教授の池上英洋氏との対談も収録。
本書の読みどころを補完するとともに、さらに興味を広げる内容になっています。

経営者、リーダーの教養充実に大きく役立つ、この濃縮された骨太な一冊、
ぜひとも読んでみてください。

尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は、
『SOFTLY』(アーティスト:山下達郎)

SOFTLY/amazonへ

です。

言わずと知れた日本音楽界のレジェンド。
この新作のアルバムジャケットには、ヤマザキマリ氏による肖像画が使われています。
本場イタリア仕込みのルネサンス様式の油絵に注目!
山下氏の円熟の妙味、本書と合せてお楽しみいただければ幸いです。

では、また次回。

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