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製造業

第244号 大きな成果を求めない改善

柿内幸夫─社長のための現場改善

 下の写真は、移動中に見た富士山です。いち早く雪をかぶっています。美しい景色を読者の皆さんにもご覧いただきたく、撮影してまいりました。

kaki244-1.jpg  さて、先回は洋上研修の事例を用いて、「みんなが参加して、テーマを解決していくことの重要性」をお話ししました。

 とはいえ、誰もが洋上研修のような大規模な研修に参加できるわけではありません。よって、全員参加型の問題解決法として、もっと身近な方法を今回はご紹介いたします。  

 その方法とは、みんなが身の回りのちょこっとしたことを自分で改善して、それを報告し合うという「チョコ案制度」です。

 最初に「チョコ案制度」の特徴を列記します。

 1) 大きな成果を求めない。

 2) 独創性を求めない。

  3) 会社の役に立つことや仲間が喜ぶことであれば、従来の改善提案の常識にとらわれずすべて評価する。

 4) 結果のみでなく、プロセスも評価する。

 5) 報告の用紙も極力簡素化し、「改善以前の状況」と、「改善後の状況」と「自分の氏名」の3点を書けばよいというメモ程度の内容で十分とする。

 6) 一般の改善提案制度のように内容の等級付けをしない。

 7) 報奨については1件100円前後の金額が妥当であると考える。

 8) 1ヶ月に全員が最低でも1件の改善を実行して報告するといったルールを設ける。

 9) 気軽な発表会を実施し、みんなで改善というものに慣れ親しむ。

 これらの特徴があるのですが、これだけではどういうことか分かりませんね。そこで、これから順番にそれぞれの特徴についてご説明いたします。

 1) 大きな成果を求めない
 普通、「改善の実行」というと、「それでどういう成果が出るのか?」と聞かれ、「成果を金額で報告せよ!」と指示されるような印象を持っておられる方も多いと思います。

 私もそういう場面に多く出会っています。その結果、改善報告の書類を見るとかなり無理なやり方で金額を算出していたり、あるいはすごい改善であるのに効果金額が少ないため、成果を不当に低く評価されている事例も見かけます。

 私自身が現場で改善をしている中で、成果を金額に置き換えることはできないけれど、この改善は経営に対して極めて大きな役割を果たしていると思えることはとても多いのです。

 例えば、それまであまり挨拶をする習慣が根付いていなかった工場で、「みんなで打ち合わせをして、お客様をお迎えするときに元気で明るい挨拶をするようにした」ということがあったとします。

 この改善を金額に置き換えて成果算出することはできないでしょう。しかし、挨拶を改善した結果、工場に見学に来られたお客様が皆さんの態度に感心して注文を下さるということは十分に考えられることです。

 実際にそういうご経験をお持ちの方も多いことでしょう。そうであれば金額効果は書けないけれど、この行動を改善と認めてみんなをほめてあげることができれば、参加した皆さんは喜んでくれて、さらにレベルの高い変化をめざせるでしょう。

 しかし、もし改善報告には成果を必ず金額で示すことが必要であるとなると、この改善は報告できないことになります。

 それだけならいいのですが、成果を金額で表せるもの以外はやっても仕方がないというような感覚が生まれないとも限りません。

 もちろんこれは極端な言い方ですが、金額効果が出なくても改善実行の優先度合が高く設定できるようなことは必要なことだと思います。

 そこで、「チョコ案制度」では金額効果がないとダメということは言いません。たとえば、ものの置き場所を右から左へ変えるだけであっても、その結果わずかでも楽になる効果があれば、それがどんなにささいな変更でもよしとするのです。

 というわけで、次回以降、「チョコ案制度」の特徴をひとつひとつ順を追ってご説明いたします。どうぞよろしくお願いします。

 急に冷え込んできました。どうぞ風邪などひかれませぬよう、お元気で頑張ってください。

kaki244-2.jpg

copyright yukichi
 

※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。
etsuko@jmca.net

 

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