皆さん、こんにちは。今回も私の著書「改善の急所101項」から1項を紹介し、実例を挙げて解説します。
【急所43】作業を教えるな、仕事を教えよ。(106頁)
「作業と仕事はどう違うのか」…一見、分かりにくいかもしれません。そこで、たとえ話で説明してみましょう。
ファミレスで会計を済ませたとき、対応してくれるお店の人は例外なく「ありがとうございました。またおいでください」と言葉をかけてくれます。
しかし、同じ言葉を使っていても、私の方を向いて微笑みながら言って下さるのと、私の方をまったく見ないで、機械的に声を出すのでは、受ける印象が完全に正反対になります。
よそを向いてそのセリフを言われると、「この店にはもう来たくないな」と思ってしまうことさえあります。よって、これでは逆効果です。
つまり、サービス業はお客様に喜んでもらうことが「仕事」であり、レジでは代金を受け取りお客様をお送りするという流れの中で、お客様に喜んでいただくことが課題となります。
レジはお客様とそのお店の最後の接点ですから、そこでの「仕事」は、リピーターになってもらえるような良い対応ができることであり、どういうセリフをしゃべるかという「作業」を教えるだけでは不十分です。
同様に、工場改善でも「作業」ではなく「仕事」を教えることがレベルアップの急所となります。精密研磨をしている神奈川県のN社の事例をご紹介しましょう。
N社は、大きな品質不良を出してしまいました。カムシャフトのカム部分の研磨をする時に逆の方向に研磨をかけてしまったのです。
研磨ですから、できた製品の見た目はツルツルピカピカで問題は無いように見えましたが、拡大して見ると研磨方向が逆なので、納入先で実際に組み立てて回したところ、摩擦が大きくて異音が出たというのです。
試作段階で起きたことなので大事には至りませんでしたが、量産段階で発生したら大変なことになった事件でした。
原因は、その加工を担当した作業者にカムシャフトを加工した経験がなく、加えてカムシャフトというモノがどういう用途で使われるものであって、そのためにどういう注意が必要かという知識がなかったことでした。
図面上に方向の指示は書いてあったのですが、左右対称の形であったため、そこにはあまり気が回らずに、逆方向にセットして作ってしまいました。
したがって、納品したカムシャフトの見た目は図面通りですが、見えない部分が間違っていました。つまり、N社が不良を出してしまった原因は、仕事の意味を理解しないで作業をしてしまったからですね。
要するに、作業手順を教えることはもちろん重要ですが、「その部品は最終製品のどの部分でどういう品質が必要なのか?」そして、「この仕事をするには何を考えて行動しなければならないか」を自ら考えて行動できるように、教育をすることが大切なのです。
なぜなら、このような教育を通じて、あらゆる事態に対して応用が利くレベルの高い技能者が育つからです。
モノづくりが細分化されればされるほど、ここで述べた難しさは増えると思います。しかし、それを乗り越えることが日本のモノづくりのレベルアップです。元気を出して頑張りましょう!
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