今回は、先回に引き続き「内製化」のお話しをいたします。
先回のコラムで、「内製化などというのは、専門家がいる大企業だけでの話だと思いこんでいる方がいますが、決してそんなことはありません」と申し上げました。今回もいろいろなお話をしますので、より高い流れのレベルの実現のために、内製化実行の参考にしていだきたいと思います。
内製化の目的の一つとして、工程間の流れレベルを上げてくれる設備は、売っていないので自分で作ると申しました。しかしそれだけでなく、買うと高いけれど、これなら自分で作れるのではないかと考えて内製化する、というコストを下げる目的ももちろんあります。
先回ご紹介したS社がプレス設備を内製化した事例も、本来の目的は流れ生産ですが、買ったら高いプレス設備を自力で作ったのですから、コストにも大きな貢献をしています。
そこで、コストを下げるための内製化に必要な考え方をご説明いたします。
例えば、電気屋さんで売っている食器洗い乾燥機を想像してみてください。もしお近くに実物があったら見てみてください。
台所で毎日使っているから当たり前すぎて気付かなかったかもしれませんが、実に多く種類と多くの数の食器が入ります。皿、茶わんはもちろんのこと、箸、スプーン、フォーク、コップと食べるのに使うあらゆるものがビシッと収まるようになっています。
次に、スイッチを入れてみて、どうやって汚れが落ちるのかを見てください。洗い残しがあってはいけませんから、洗剤が入っているお湯が、すべての食器の隅々にまんべんなく当たっているでしょう。
そうなんです、食器洗い乾燥機はとても複雑に、そして速く動く機械です。これを内製化するのは難しいし、できたとしても買った方が安いでしょう。
しかし、この複雑で速い動きはなぜ必要なのでしょうか? 変なこと聞くなあ、何でもできて、速い方がいいに決まっているじゃないか、とお考えではありませんか? しかし、先回ご紹介したS社のプレス機の事例はゆっくり動いても大丈夫、速く動かす意味はない、と気付いたからできた内製化でした。
そして今回ご紹介する金属加工のJ社では、何でも洗うから複雑なのであり、もし同じモノばかりを洗うのであれば、とてもシンプルな機械になると気付きました。同じモノばかりな、らつかみ方とお湯をかける方向は決まっていますから。
すなわち、汎用機は高くて大きいけれど、専用機なら安くて小さいのです。そして専用機なら、自分で作れる可能性が高いです。何しろシンプルですから。
J社では、それまで使っていた大型の洗浄機が老朽化で使えなくなりました。そこで、これまでの大型汎用機をやめて、ラインごとの小型専用機とすれば自分で作れるし、切削直後に洗うと切削油などが簡単に落ちるので、洗剤などの使用も大幅に減らすことができると考えました。
そして切削が終わるやいなや、そのワークを治具にセットして回しながら60℃のお湯をかけると汚れがきれいに落ちることを発見したのです。もし以前と同じ大型の新設備を買うと、ものすごいお金がかかりますが、簡単な構造の小型洗浄機をラインに合わせて作ったので、ものすごく安いお金で済みました。
J社の機械加工職場は各ラインで1分に1個のスピードで製品を加工しており、削りたての製品をそのまま連続的に洗えば、色々な形のものを洗う必要がありませんからセットする治具はシンプルですし、サイクルタイムは1分でいいのです。
このように、汎用機を作るのは難しいですが、専用機なら簡単に作れることが多いと思います。皆様の会社の中で専用機化できる工程を探してみると、いろいろな発見が出てくることでしょう。