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製造業

第154 号 成功する多能工化のすすめ方

柿内幸夫─社長のための現場改善

 なぜか、行く先々でお掃除小僧を見つけます。やはり、日頃から5Sの大切さを指導している仕事がらでしょうか。きっと無意識のうちに、整理とか整頓とかを気にかけてしまっているのでしょう。

●静岡県の沼津で見つけたお掃除小僧

KAKI154-1.jpg

●東京都の高尾山で見つけたお掃除小僧


KAKI154-2.jpg 今回は多能工化の進め方についてお話します。

 なぜ多能工化が必要かについては先回ご説明したとおりですが、大切であることは分かったけれど、そう簡単にはできませんよ…、という声も聞こえてきました。

 なぜ簡単にできないと考えるのですか?と尋ねてみると、皆さんが多能工化を「多くの仕事を完璧にマスターすること」と考えておられるからだということが分りました。

 そうではありません。もちろん、それができればそれに越したことはありませんが、違います。まずは必要最低限の仕事ができれば、それで十分に多能工化が始まったと言っていいのです。

 例えば、これまでに研磨機(グラインダー)を扱ったことのない方が多能工化にチャレンジをする場合を考えてみましょう。研磨機の操作ですが、実際には砥石の交換やその後の調整といったことをすべてマスターしようとすると、それはかなり難しく、とても時間がかかります。

 しかし、そういう高レベルのことは後で勉強するとして、まずは材料の取り外しの方法と検査のやり方、そして異常が起きた時の停止ボタンの押し方とその場合の報告先を知ることです。難しい前準備の部分はベテランの方がやって下さるという前提でいいのです。

 私達にはけっこう完璧主義なところがあって、そんなレベルで多能工化と言ってはいけないのではないか?!と考えがちです。しかし、何事にも順番があります。まずはここから始めて、徐々に慣れたところで、次のステップに入ればいいのです。

 例えば、自動車を考えると分りやすいのですが、まだ日本に自動車がほとんどなかった頃の運転免許試験には、自動車の整備も含まれていたのだそうです。昔は、車の性能が低くてしょっちゅう故障をしたし、また、修理の施設も限られていたので、そのくらいのことができないと、免許を与えるわけには行かなかったのでしょう。

 しかし、現在の自動車はきちんと点検を受けていればまず故障しないし、道路も整備されてパンクもめったにしないので、私たちは、そこまでできなくても免許証を手に入れることができます。

 私自身は運転免許を取って40年経ち、自動車整備士の資格も持っているのですが、パンクをしたことがないので、タイヤの交換ができるかどうかあやしいし、自家用車も10年使っていますが、未だにボンネットを開けたことがありません。

 日常生活ではこの程度のレベルで、いろいろなことが行われます。工場においても、こんな感じで、気楽に多能工化を始めてみましょう。このレベルでいいんですよ、とチャレンジして頂ければ、まず、一人ひとりが働ける分野が広がります。

 そうなることによって、先回ご説明したように、会社の中における生産に対する柔軟性が高まります。

 「あの人しかできない仕事だから、これ以上注文をとっちゃダメ」、ではなく、「私も手伝えるから、もっと注文とってこなきゃダメ」になりますから、これは経営を支える大きな進歩です。

 さあ、「全員の力を総動員する」ということの一端をお分かりいただけたでしょうか。言葉としてはとても分りやすいので、誰も反対する人はいないと思いますが、いざ総動員されても、何もできない素人集団では困ります。普段から必要な技術や技能を練習して、高めておくことが大切です。

 ピンチはチャンス。この時期に本物のモノづくりを目指しましょう。

KAKI154-3.gif

copyright yukichi

※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。etsuko@jmca.net

 

 

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