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第131回ラーメンの海外進出によって、第3期の成長ステージ入りも(アリアケジャパン)

深読み企業分析

食品企業にあって売上高営業利益率14.4%を誇る高収益企業がある。それが天然調味料メーカーのアリアケジャパンである。同社は豚や鶏の骨からエキスを抽出し、外食産業、加工食品メーカー、中食産業などに調味料として供給するメーカーである。天然調味料とくくられるものの製造は、世の中のあらゆる場所で行われている。一例が街のラーメン屋である。街のラーメン屋では、既成のスープを使っているところを別にすれば、豚や鶏の骨、魚のあら、野菜などを数時間から数日かけて煮込んで秘伝のスープを作っている。

こだわりのレストランでもフォンドボーやデミグラスソースをやはり店独自のレシピで作っている。このように天然調味料は身の回りのあちこちで作られているものである。当然、手間がかかるため人件費まで考慮すると高コストなものとなる。これを工業化しようとしても、やはり大変な作業となる。一般的な方法は、規模だけを大掛かりにして、街のラーメン屋やレストラン同様に釜で材料を煮込むことである。それを人手でラインに移し、その後はほぼ自動で乾燥や濃縮、パッケージングを行うことで最終製品となる。

工業化しても高コストとなるのは、釜からラインに移動させる段階でどうしても人手がかかるためである。特に難しいのが残渣の処理である。これは、原料の骨が形の定まっていない固形物であることによる。同社の最大の特徴は、天然調味料の製造を完全自動化したことによる圧倒的なコスト競争力である。しかも、完全自動化に成功したことによって、純度の高いエキスを抽出することができるため、同時に製品クォリティまで高めることが可能となった。

まさに、同社の強さの秘密はここにある。今から40年ほど前、当時不可能と思われた抽出工程の自動化に成功したことだ。この技術は門外不出であり、製造部品も別々の会社に発注する念の入れようである。しかもラインでは個々の機械の製造企業のラベルをはがしている。この自動化の成功は年を経るごとに、ますます商品の差別化に大きく貢献している。もはや世界でも太刀打ちできる企業は存在しないとも言えよう。

ハイクォリティ、リーゾナブルプライスやミドルクォリティ、ロープライスが競争に勝つ必須条件であるが、同社はそのさらに上を行く、ハイクォリティ、ロープライスの企業である。これが同社の強さの本質であり、今や日本の食品の味を支配していると言っても過言ではなく、徐々に世界の食品の味を支配し始めているとも言えよう。

こういったライバルを圧倒する技術力でこの40年間、同社は高成長を遂げてきた。まずは、1980年代から2000年代初旬の17年間に同社の営業利益は5億円弱から56億円と10倍以上に増えた(単体ベース)。これは年率15.3%の高成長である。ただし、同社にも弱みはあって、製造工程の初めから終わりまでエネルギーを必要とするため、原油価格や円安には弱い。2000年代初旬から中旬にかけてはいわゆるBRICSと呼ばれる新興国の勃興によって、世界的に好景気となり、原油高、円安が同時に起こった。そして、最後にはリーマンショックが起こり、同社業績も2000年代初旬をピークに2008年度には大きく落ち込んだ。

しかし、グローバルな景気減速下では原油安、円高も起こることで息を吹き返し、2010年代いっぱい再び高成長が続いた。この間、連結ベースの営業利益は29億円から143億円と11年間やはり年率15.7%の高成長を遂げる。

この計算では途中の業績悪化期は除いているので、通しで見ると、1986年度の営業利益5億円が2019年度には144億円と年率10.7%の成長となっている。ただし、初めの17年間と後の11年間では主役が大きく変わっている。それは、最初の17年間は国内中心の成長であり、後の11年間は海外市場にけん引された成長であった。

その後、2020年のコロナ禍、そしてロシアのウクライナ進行に端を発したエネルギー高、円安によって、2023年度まで業績は低迷している。それに対して、2024年度はエネルギー価格がピークアウトし、そして昨今は日本の外食産業の海外進出によって、同社の調味料が再び脚光を集めようとしている。

これはアベノミクスによる観光立国を我が国の経済立て直しの一助とする取り組みによって、訪日外国人が急増し始めた。コロナによって一時はその動きがストップしたが、コロナ明けと同時に世界中から観光客が日本に殺到している。その中で、あらゆる分野の日本食が脚光を浴び、世界では日本食ブームが巻き起こっている。それらの日本食のうち、同社と関係の深いメニューがラーメンとカレーである。両メニューとも実は海外で人気の日本食の1、2位を争うメニューである。

特に国内のラーメンチェーンが競って海外に進出しているが、その場合、多くの企業が同社に調味料の製造を依頼する模様である。こういった背景から、円高、原油安も相まって、まさに今、日本食の海外進出によって同社は第3の成長ステージに入ったのではないかと考えられる。

有賀の眼
このところ、当コラムでは日本企業のグローバル展開の新潮流として、過去、日本企業の海外進出をけん引した製造業に加えて、サービス業の海外進出を取り上げている。訪日外国人の急増によって、日本を訪れた外銀観光客の多くは日本のおもてなしに感銘を受けて帰るそうである。

これはまさにサービス業の国際競争力の高さを示すものであり、今やその名声を引っ提げて、サービス業の中でも外食産業の海外進出が勢いを増している。その外食産業の海外進出、中でもラーメンの海外進出の陰の立役者が同社であると言えよう。

 

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