多くの企業は自らはどうしようもない、自社ビジネスに対するマイナスの外部環境変化に対して嘆くことが多い。もちろん、その外部環境変化を乗り切ろうと企業努力を行うことは当然である。
しかし、そういった自社にマイナスの外部環境変化こそより企業を強くするチャンスと言って、むしろ嬉々としている企業もある。そんな企業の代表がニトリである。
同社は製品の90%以上を海外で製造して輸入販売を行っている会社である。そのため、円安はストレートに業績のマイナスとなる。
当然ながら、ここ数年の円安は同社業績に大きなダメージを与えてきた。1円の為替変動で同社の営業利益率は0.3%強変動する。2022年2月期と2024年3月期(途中で決算期変更を行っている)では決済レートが111.2円から146.6円と35.4円の円安となった。
ちなみに2022年2月期の業績は売上高8,116億円、営業利益1,383億円であったのに対して、2024年3月期は売上高8,958億円、営業利益1,277億円となっている。
ここでは1円の為替変動で営業利益率が0.3%変動するとして計算すると、この2期間で円安によって営業利益率は10.6%pt低下したことになる。つまり、為替の影響だけしかないと考えると2024年3月期の営業利益は574億円となってしまう。
しかし、実際の営業利益は1,277億円であり、その差額の703億円は企業努力によって吸収したものである。しかも、実際はこの間、海上輸送運賃も急騰しており、吸収すべきコスト増は為替だけの問題ではなかったのである。このコスト吸収にはまず、値上げがある。
しかし、同社の企業ビジョンは我が国の国民生活を豊かにしたいというものであり、極力値上げを回避する努力をする。当然ながら、円高になるとできる限り値下げをしようとする。
それでは、値上げ以外のコスト吸収手段とはどういったものであろうか。なお、同社の場合、賃金には一切手を付けない。むしろ、いかに毎年、世の中を上回る賃金上昇を成し遂げるか努力しているくらいである。大学生の就職希望先ナンバーワンに輝くのも十分理解できよう。
同社が円安のコストを吸収する手段は主として製品開発である。同じ効用をもたらす製品でも、原材料を見直し、生産地を見直し、そして輸送コストを見直すなどで、同社が求める利益率を確保できるような製品を新たに開発するのである。
特にこの1-2年のように急速に円安が進む局面では、年間に全製品の50%を新製品に入れ替えることを目標にしている。
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