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- 第22号 創業社長のための全員営業の活用法【実践編】
第22回コラムは、創業社長が全員営業を活かして、新しい施策の導入や会社の営業力アップへとつなげるヒントをお話します。
前回コラムで、創業社長は会社への影響力は5種類の社長の中で圧倒的に高いが、たった一つの「言いっぱなし」という特徴のために、その影響力を活かしきれていないということをお伝えしました。
しかし、 「いや、俺は〝言いっぱなし“になんかしていない」、「仕事の指示はきちんと確認をとっている」…といった思いを持たれる社長様もいらっしゃるかもしれません。
では、1つ質問をします。
『あなたの会社では、社長が出席する会議の議事録はとっていますか?』
会社の方向性や新しい施策は、中小企業では、社長が参加する会議で決定されます。あるいは、社長ともなれば、ある種、独特の感覚をお持ちの方もいらっしゃるので、時には、独断で決定されることもあるでしょう。
いちいち文字や文章にせずとも、創業社長の場合は、その影響力ゆえ、発言や指示そのものが強い強制力をもって、社内に通知されます。
しかし、残念ながら、その影響力は長続きしません。いえ、前回コラムでお話したように、時間の経過とともに、人の性質上、記憶から薄れていくという方が正しいのです。
実際、私がいままで見聞してきてきた中小企業では、創業社長が出席する会議で、きちんと議事録をとっていた会社は、半数未満です。
また、仮に議事録があっても、一般的な形式のA4用紙1枚に内容をまとめるだけならば、議題と結果を示すのみで、創業社長の発言内容や詳細な指示は不明となります。
それゆえ、社長の指示や発言のもととなっている想いや考えは、その会議の場で話されていたとしても、会議に参加している役員や管理職が記録していなければ、ほとんど伝わらないか、或いは、伝わる部門と伝わらない部門とに分かれます。そして、次のようなことが起こってきます。
『現場には、社長の指示や発言は伝わっているが、なぜ、それをやるかの理由や背景は伝わってこない』
それを言わなくても考えてやるのが役員や管理職の仕事だろうといっても、1~2回ならいざ知らず、そうなってしまう状態が続くならば、その最大の原因は、残念ながら、現場に伝えたい指示や発言を工夫して形(文字や文章)で伝えようとしない創業社長にあるのです。
こういったことが起こってくるのは、会議だけではありません。
・経営計画
・業績目標
・新しい施策の展開
・朝礼での訓示
・個人への注意 …なども大なり小なり同様のことが起こってきます。
ゆえに、社長がどうしても「これをやりたい」あるいは「これをやっていく」と決めたことや、「会社で徹底して行いたい」と考えていることは、きちんと文字や文章に残して、社員の目に触れるようにする仕組みが必要になるのです。
しかし、それを文字や文章にするのは、社長が自らやる必要はありません。
会議であれば、参加者に書記を分担させて、会議の場で「ここは重要だから、私の発言もきちんと記録をとるように」と言えばいいのです。また、経営方針や新しい施策についてであれば、事務スタッフで、文章が上手いスタッフに、10~15分話をして、それをまとめてもらうなども一案です。
また、200人~300人規模の会社ともなれば、社長の何割かには秘書的な人が傍らに控えているものです。もし、そうであれば、秘書業務だけでなく、昔の戦国大名のように祐筆(文章や手紙を代筆する職務)として活用することもできます。
あとは、その緊急度と重要度に応じて、形(文字ゆあ文章)になったものを、会社や仕事の現場で何度も目に触れるようにしたり、皆の前でそれを使いながら発言する機会を増やす等で、社長の真意や想いが浸透する会社や営業組織へと近づけることができます。
全員営業というと、会社全体をダイナミックに営業戦力化あるいは、営業部門と他部門とを連携されるといったことに注目がいきがちですが、全員というだけあって、創業社長そのものの経営力や活性化へのテコ入れも含まれてきます。
実際に新しい施策を導入したり、経営理念を浸透させたりという場合には、こういった細かな配慮や仕組みがあってこそ、始めて、現場が変わってゆくのです。
次回は、創業社長に比べると、どうやっても社内外の影響力が低くなる後継者社長についてお話します。
今回のポイント(〆の一言):
いまいる社員に一つ役割を追加するだけで、社長の想いは伝わり、営業現場は強くなる。