今回は前回の続きで、総資産が増加する場合を考えてみましょう。もちろん、良い増加と悪い増加があります。
総資産の増加の原因として、自己資本増加による総資産の増加が一番、好ましいと言えます。
自己資本が増加する原因は大きく二つです。
まず、増資による自己資本の増加です。
よく上場会社が増資をしますが、言葉は悪いですが、一番手っ取り早く自己資本を良くすることができるからです。
しかし、中小企業は、なかなか簡単には増資できません。オーナー社長の資金に限界があるからです。また、第三者の資金を活用することも可能ですが、オーナー会社、つまり、自分の会社ではなくなりますので、やはり躊躇します。
中小企業が上場を考える時、資本政策(簡単に言えば、株主構成)を実施しますが、長年、会社の経営をしてきた社長にとって、自分の会社ではなくなることが、上場を躊躇する大きな原因になっていることは確かです。
ですから、中小企業が増資によって自己資本を増加し、その結果、総資産を増加させることにはどうしても限界があります。
ただ、社歴が浅い会社や、若い社長などは、あまりそんなことは気にしないようです。その表れが、M&Aです。自社の事業を一番いい時に売却をします。何の躊躇もなく。
二つ目は利益確保による自己資本の増加です。
そのためにまず考えられるのは、売上による自己資本の増加です。もちろん売上がそのまま、自己資本の増加にはなるわけではありません。
損益計算書を考えればわかりますが、売上を獲得するためには、売上原価や営業費等の経費がかかります。
単純に考えますと、売上-売上原価-営業費=営業利益に見合う金額しか、自己資本は増加しないことになります。だから、自己資本を増加するには時間がかかってしまいます。
自己資本の増加以外の総資産の増加及び減少を考えてみましょう。
まず、総資産の増加から・・・
借入による固定資産の取得などは経営において大きな出来事の一つです。固定資産を現金で購入することはあまりないでしょうが、この場合は、固定資産が増加し同額の現金預金が減少するため、総資産の増減には影響がありません。
しかし、購入資金が借入や未払いの場合は総資産が増加することになります。
また、売掛金の回収があっても総資産は増加しません。売掛金という資産が減少し、現預金が増加するためです。現預金を使って資産を購入しても総資産は変化しません。
次に総資産の減少を考えます。
負債の減少に伴い総資産は減少します。
例えば、借入の返済や未払いの支払を行うことで総資産は減少に向います。この減少は経営において、特段、問題があるものではありません。
資産の費用化によっても総資産は減少します。
例えば、売掛金の貸し倒れによる費用化や固定資産の売却や除却も考えられます。また、使用しない機械等について、多額の減価償却費を計上したことも考えられます(有税償却といわれるものです)。
別の箇所でもお話しますが、資産は必ず費用になります。また、京セラの稲盛名誉会長も「いかに早期に資産を費用化させることが経営の極意でもある」とその著書で言われているように、資産の費用化は好ましいことと考えます。
収益を生まず、現金化できない資産が多くあり、その結果、総資産が大きくなっている場合は、150センチの小学生が、大きな縫いぐるみをかぶっているようなものなので相手と戦って勝てるはずがありません。
このような場合は、現金化しにくいものや収益を生まないものは、資産から除去すべきです。
では、どのようにして除去できるのでしょうか。
現金化しにくい資産について、たとえば、それが不動産であれば、時間がかかったとしても、まず、売却を検討すべきです。その時、いくらで購入したということは一度、忘れるべきです。なぜなら、安価でしか売却できない場合、躊躇してしまうからです。
なぜ、売却しなければならないのかの理由を考え、貫くことが必要です。
投資関連はすぐにでも売却をして現金化すべきです。
出張旅費の未清算ではない仮払金についても消すべきです。
さて、どのようにしてゼロにするかです。仮払金を消すために次のような方法もあります。
社長が金融機関から仮払金相当金額の融資を受け、社長はそのお金で仮払金を返済します。会社はその返済された金額で生命保険等に加入します。
金融機関は生命保険に質権を設定します。社長は金融機関に返済する分だけ役員報酬を増やし、返済していくのです。
手の込んだ方法ですが、この方法は、実は、銀行主導で行われることがあります。
領収書をもらえない相手に支払った仮払金は、会社で計上しないようにするためには次のようにすべきです。
領収書を発行できない相手に対してお金を渡す場合は、一度、会社から社長にお金を貸します。そのお金を社長は個人のポケットマネーで渡します。
そうすれば、仮払金にはなりません。
返済見込みのない貸付金も同様です。社長以外の貸付金は、一度、社長への貸付金に代えて、社長から貸付先へ貸したことにするか、あげたものとすべきです。
この様にしなければ一度膨張した総資産は簡単には減少できません。
早めの意思決定と、長期間の行動が必要になります。