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<事例―12 ストウブの「鋳物ホーロー鍋」(B2BとB2C)>プロが「ピコ・ココット」を使い、食通に知られるようになった・・それがストウブだ

酒井光雄 成功事例に学ぶ繁栄企業のブランド戦略

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 ●ビストロで見かける黒い鋳物鍋
 
 気の利いたビストロなどで、蒸し野菜や煮込み料理、あるいは炊き込みご飯などを注文すると、鋳物でつくられた黒い鍋に料理が入ったままにテーブルに運ばれてくることがある。
 
 無水調理が可能なこの鍋は、日本でも著名なシェフたちの目に留まり、数多くの店舗で採用されるようになった。その黒い鋳物鍋の名は「ピコ・ココット」といい、メーカーはストウブという企業だ。
 
 普通の鍋なら数千円も出せば買えるが、ストウブの商品は直径20cmの「ピコ・ココット」の場合、並行輸入品で1万5千円から3万2千円の幅で販売されている。
 
 
 
 ●ストウブ誕生の経緯
 
 ストウブは1974年にフランスのアルザス地方でフランシス・ストウブ氏が創業した調理器具メーカーだ。この企業はフランス料理の大御所であるポール・ボキューズ氏らと共同で、プロ向けの鋳物鍋を誕生させた。
 
 当初はココット・ストウブと呼ばれていたが、これが現在のピコ・ココットの原型となっている。
 
 
 
 ●ストウブの製品特徴
 
 ストウブは1点1点砂型で成形され、型は使用後に廃棄される。職人による手づくりのため仕上がりには微妙な違いが出る。
 
 鍋の内側はザラザラとした仕上げで、汚れやくっつきしにくいように加工されている。鍋蓋の裏にはピコと呼ばれる突起が数多く施されている。
 
 これは料理を加熱すると蒸気が生まれ、その蒸気が鍋蓋に触れると液化し、食材に降り注ぐという仕組みだ。この作用により素材の持つ水分や旨みを逃がすことなく、調理できるように工夫されている。
 
 このピコの機能により、ストウブは無水調理が可能だ。
 
 
<「ストウブ」の事例に学ぶこと>
 鍋のような調理道具は買換える頻度(購入頻度)が限定され、一般的には劣化したから買換えることが多い。その一方、多くのメーカーは購入頻度が低いにもかかわらず量産化を図り、安価に販売してきた。
そのためブランド価値は長年高まらず今日に至っている。国内に鍋釜類のメーカーは数多く存在するが、世界でそのブランド力を発揮している企業はほとんど存在していない。
 
 逆にストウブは「手づくり」「高価格設定」「著名料理人との共同開発」「業務用として利用」「料理好きのこだわりアイテム」となり、その評価が次第に一般生活者にも知られるようになり、業務用と一般用の両市場を開拓し、現在の地位を獲得した。
 
 ブランド力を発揮する企業と、そうでない企業の差はどこで生まれるか。ストウブの例は顕著にその理由を教えてくれている。
 
 
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