国際競争力ランキングによると日本は27位。1992年までは一位だった。この評価を行っているスイスのビジネススクールIMDの学長等が、『なぜ、日本企業は「グローバル化」でつまずくのか』を出版し注目されている。その本によれば日本低迷の理由はグローバル戦略の欠如にあるという。
21世紀のビジネスを担う経営者にとって「グローバルな見方ができる」ことは会社の規模を問わず必須である。地域限定の顧客を対象とする地場産業であろうと農家であろうと、世界の動きに左右されるのが現状である。
ではどのようにしたらグローバルな視野を身につけさせることができるのだろうか?勿論留学、海外キャンプへの参加などは有効だろう。是非とも中国やアジアの途上国での経験を積ませたい。世界のファミリー企業のオーナー達をみてもグローバルな子弟教育を幼少時から実践している。国際会議や海外出張に同伴させる。家にはエコノミストのような世界誌をおく。エコノミストの漫画一つみてもそのときの世界の視点を垣間見ることができるのである。
グローバルな付き合いには言葉が通じければどうにもならない。今後は英語に加え中国語など3もう一カ国語位はマスターさせたい。米国の投資の鉄人ジム・ロジャーズは一人娘には中国語を幼いときから習わせ、現在シンガポール在住で、娘はシンガポールの学校に通わせているそうだ。
海外の国際学校に子弟を留学させる日本人はなぜそうするのだろうか。外国語のマスターに加え「日本では習得が難しいグローバルスタンダードな、子どもに考えさせる創造力を発揮させる教育、クリティカルシンキングを取り入れている教育」を受けさせたいからだという。日本で育てたのでは「失敗を恐れる、自走力に欠ける、課題を見つけることができない」といった今時の日本の若者に共通する欠点が克服できないという人など、その理由は様々である。
最近シンガポールの国際学校に小学生入学させた人は「英語、中国語のマスターだけでなく日本よりずっとよく勉強させてくれる」と言っていた。マレーシアの国際学校も人気があるようだ。
勿論日本にいて簡単に出来ることだって多い。子どもが小さいうちは世界地図を風呂場にはり、あちこちの話をしてやるとか、動画での世界旅行もいいだろう。「日本を中心に考えないように地球儀を北極の上から見させるといい」という人もいる。留学生のホームテイを受け入れたり、或いは週末に招待することだって貴重な経験となろう。
グローバルな見方ということは何も地理上にとどまらず、物事を日本や世界の歴史の流れの中で位置付けることも意味するのではないだろうか? 実際、欧米のファミリー企業のオーナーと話していると、よく『ローマ史』ではこう書いてあったなどの話がでてくる。また、前回ご紹介した石川県の石川酒造の場合のように、代々の当主が250年に亘って一日も欠かさず書きつづった日記などは、時の流れの中でグローバルな見方を養うまたとないテキストとなろう。
日本は周囲を海に囲まれており、しかも海外へ行かずとも充分な教育を受けさせることができるだけに、「井の中の蛙」に陥りやすい。歴史のあるファミリー企業といえど、素早く業態を変えたり、取引相手国をシフトするなど、世界の情勢を読みながらのかじ取りが欠かせないのである。
榊原節子