ファミリービジネスを子弟に継がせる場合、「社員がどうその後継者候補を見ているか」は極めて大事な点だ。どんな子供だったか(兄弟との比較)、学校ではどうだったか、受験に失敗した等など。社員、特に古参の社員は当人が生まれたときから知っているだろう。
その後継者がいよいよ入社した時、成人した彼の姿は、よくも悪くもそれまで子ども時代から抱かれていたイメージや情報とはかなり異なっているかもしれない。だから入社直後は非常に大事で、「きちんとした熱心な仕事ぶり、大人の態度、時間に遅れない、」など、将来のリーダーとしてふさわしい姿勢を見せなくてはならない。が、イメージの修正には時間がかかるものだ。あせらない方がいい。
時間がたつにつれ、後継者は自分の態度がどう評価されているか、改めるべき点はあるかなど知りたいと思う。フィードバックが欲しいところである。親や親戚に対しては皆本音をなかなか口にしないだろう。社員の間に率直な意見を言ってくれる友達ができればいいのだが、そうでない場合は、会計士とか、顧問弁護士等から間接的に情報を得る手もある。
「自分たちと同じように、或いは、それ以上に頑張って働き、割をくう仕事も率先して引き受ける」。まだ経験は浅いが、学ぼうという姿勢が強く、どんどん新しい提案をしてくるのはさすがだ」。こんな評価になれば後継者としての下地固めに成功したことになる。ところが「自分で稼いだ金じゃないのにベンツに乗ってやってくる」「MBAだかなんだか知らネーが、そんなもんはここじゃ通用せんワ」などと陰口されてしまうケースをしばしば見受ける。大切な初動期を乗り切るために同族経営の後継者教育に長けたコーチやコンサルタントにアドバイスを求めるのも一法だろう。言動は立場によって様々な受け止められ方をすることを肝に銘じた方がいい。
後継者に関する社員情報量に比べ、後継者の社員情報は圧倒的に少ない。子供のころに得た情報は自身未熟さ故に誤っていた可能性もあるから、全くさらな気持ちで接して自分の新たな情報のストックを図ろう。
榊原節子