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- 第93回「タワーマンションを取り巻く環境変化」~不動産市況・税制改正・経年劣化のリスク~
ニューヨーク株式市場のトランプラリーは2月になっても続いているが、過去数年の傾向に変化の兆候が見えることもある。その一つに、近年人気が高まっていた超高層マンション(いわゆるタワーマンション)の人気の陰りがある。
金融緩和政策に加えて、東京五輪に向かって都心の再開発が続き、五輪招致決定から不動産のミニバブルといえる市況が続いてきた。住宅ローン金利も固定タイプで年利1%を切る水準もあり、低金利を背景に不動産販売会社の強気の見通しがしばらく続いていた。
しかし、マンションの用地確保が難しくなり、高値入札した用地コストと人件費など建築コストの上昇により、「2016年首都圏マンションの平均価格が5,490万円になったこと」や「23区内の70㎡程度の物件価格が約7,000万円になること」などが報じられている。
物件購入する世帯年収を平均より2割以上高い年収700万円と仮定しても、物件価格が年収の十倍を超えるという実情は、購入意欲をなえさせている。結果として、2016年の首都圏新築マンションの供給戸数は、24年ぶりの低水準に沈んだことも既報の通りである。
このように購入者の出足が止まった中で登場した材料が、平成29年度税制改正におけるタワーマンション高層階の増税問題だ。具体的には、20階建て以上のタワーマンションの固定資産税評価額を、取引価格の実情を踏まえて上層階ほど引き上げ、低層階ほど引き下げるという改正案である。全体の固定資産税負担は現行と変わらないが、低層階が負担減額になる一方で、高層階は負担増額になる。
新税制は2018年以降に引渡しの新築物件に限定され既存物件には適用されないが、今後は相続対策にタワーマンションを利用する節税手法だけでなく、自宅に住む人の固定資産税負担も増加する。国税当局は固定資産税改正に止めずに、本丸である相続財産評価の改正も視野に入れているので、今後の動向に注意が必要だ。
さらに長期的な大規模修繕工事に関して、高機能化したタワーマンションの設備や共用施設を維持修繕するコストが、通常マンションより割高になることが最近分かってきた。そのための修繕積立金が準備できないとしたら将来確実なリスク要因になる。マイホームや投資、相続対策にタワーマンションを取得する場合には、これを取り巻く環境変化を十分に検討してからにしたい状況ではないだろうか。
以上