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税務・会計

第29号 社員が社長の敵となるとき

会社を守り抜くための緊急対策

 前号に引き続き、まだある社長の問題をお話しします。これでは、会社を守るどころではありません。
 社員を育てるためには、社員に任せてみることも必要と考え、とにかく丸投げする社長もいます。自分で何でもできてしまう社長にその傾向があるようです。
 自分で何でもできる人が社長になりますと、部下がやっていることがとにかく気になってきます。
 そして本人は監視をしている感覚はないのでしょうが、部下からしてみれば、監視されている感じがしているものです。その結果、部下が委縮してしまうこともあり、普段の力を発揮できなくなり、結局、社長から、何でそんなこともできないのか、もっと早くできないのか、やっぱり自分でやればよかった・・・そんなことを言われてしまいます。このようなことが何度か続きますと、社員はやる気がなくなります。
 さらに追い打ちをかけることもあります。部下の失敗を責めてくるのです。部下は、途中で社長に相談し、その指示を受けたために失敗した場合でも、部下の責任にするのです。
 社長は会社の全責任を負うものです。たとえ部下がおかした失敗も、社長が責任をとるものです。
 それを社員に伝え、本当に責任をとる行動に出て初めて、社員は社長の言葉を信じます。
 自分は最後に出ればいいと考えている社長もいますが、責任の取れない、責任の取り方を知らない社長です。中小企業は大企業とは違うのです。
 社長以外に、自分の失敗をカバーしてくれる先輩がいれば、社員はその先輩をボスと思うことは当然です。
 しかし、今度は、社長は、この先輩を自分のところに取り込もうとします。もう、こうなったら、会社ではありません。
 かといって丸投げはよくないため、部下に、すべてやり方を説明する社長もいます。部下の裁量の余地などまったくありません。
 これでは、部下の成長、ひいては会社の成長は無理です。
 資金調達は社長の重大な職務なのですが、借入は経理の仕事だと考え、自分は銀行交渉しない社長もいます。これまで自分で融資等について銀行交渉してきた社長であればこの言葉にも重みがありますが、資金繰りが大嫌いで、お金のことを考えると夜も眠れない社長が、このようなことを言っても、どうせ自分ではできないからだろうと部下から思われることは当然です。それでも社長とはこういうものだと思っているから始末が悪いのです。
 オーナー会社の場合、借入は社長個人が保証しているため、借金の重みだけは感じています。そして、僕はこんなに苦しんでいると愚痴をいうのです。誰に言うかはそれぞれでしょうが、一番良くないのは、社員に言うことです。
 社長というものはこんなに苦しいんだと誰かに言いたい気持ちはよくわかりますが、社員に話をすれば、それだけで、社長への信頼はなくなってしまいます。
 売上をあげてこいと声を荒げても、売上が上がらないのが社長に原因がある場合、社員はどうしていいのかわからなくなってします。要するに、社長が構築した儲かる仕組みが悪いのです。
 こちらから訪問していく営業スタイルでは、常に下に見られてしまう。こちらに来る人には会う。そんな営業スタイルを貫く社長もいます。
 これは社長の性格なのかもしれませんが、頭を下げることが根本的にできない人なのでしょう。しかし、そのような社長でも、先生と言われている人には頭を下げるので一貫性が見られません。もちろん先生と考え方が異なりますと、とたんに態度を変え、それまでの関係をいとも簡単に切ってしまいます。
 社員が、どぶ板営業を提案しても、その必要はないと聞く耳を持ちません。それでも会社は、投資資金のおかげでもっています。いい商材やビジネスモデルであれば、投資家は期待を持てます。そして、ときには、このような社長の強気な姿勢は、投資家を安心させることもあります。
 しかし、このような儲かる仕組みでは、誰も相手にはしてくれるはずもありません。社長は、来るもの拒まずの営業姿勢は変えず、もっぱら資金調達に精出しているのです。金融は大事ですが、実物はもっと大事なのです。
 売上があげられない社長は、社長をしてはいけません。社員が不幸になります。
 社員に夢を持ってもらうことは大事だと思い、会社設立間もない会社の社長が、うちは近いうちに上場すると豪語したとしましょう。最初は、社員は、上場に夢はせることでしょう。そして、いつしか、上場なんてできない現実を突き付けられます。
 それでも、社長は、絶対にお前たちのためにも上場させるといつも言い続け、しかも、上場は大株主である社長の私服を肥やすことではないとわかってもらえているならば、本気でついていってみようとなる社員も増えてくると思います。
 やっぱり無理かなあと弱気を見せてしまいますと、社長はたちまち大ぼら吹きになってしまい、社員から総スカンになってしまうことでしょう。
 うちの社長は、毎日言うことが違うからついていけないと愚痴をこぼす人は多いようです。朝令暮改は、悪い意味で使われることが多いのですが、変えていいものと変えてはいけないものに区別しておく必要があることを社長と社員双方が知っておくべきです。
 会社や事業の理念や使命そして方向性は、そんなに変わるものではありませんし変えてはいけません。事業の存在価値もそんなには変わりません。そして目標もです。
 その目標を達成するための戦略もころころ変えては誰もついていけません。しかし、戦術はその都度、変えていかなければなりません。
 変えてはならないことに関して朝令暮改であれば、これは社員からそっぽを向かれても仕方がありません。しかし、戦術など、その場で臨機応変に対応していかなければならないことは、どしどし変えていくべきです。
 このことは現場が一番よく知っていることです。その都度、上司の顔色を伺った対応は自機を失してしまいます。
 現場に裁量を与えるためには、社長は、理念や使命そして方向性を毎日のように社員に発信していかなければなりません。
 社員は、理念や使命そして方向性に反するかどうかを判断して、対応でき、社長との間に、より深い関係が生まれてきます。
 そして大切なことは、行っている商売の「存在価値」です。この存在価値を明確に文章化して2,3行以内にまとめ、社員全員に浸透させることの重要性は第26号でお話しした通りです。

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