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第80回
毎年、移住者が増え続ける「湘南の首都・藤沢」の魅力と価値の磨き方
~2030年まで人口が増加する”奇跡の街”の【温故知新まちづくり戦略】~

次の売れ筋をつかむ術

 

 
NHKの「おはよう日本」で、『人気上昇のまち藤沢!魅力めぐる旅』と題して、神奈川県藤沢市が特集された。
 
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江の島と湘南海岸を有する、全国的な地域ブランド「湘南」の中心・藤沢市は、神奈川県において、横浜市・川崎市・相模原市の政令指定都市を除く最大の街だ。
 
毎年、移住者が増え続け、2012年に、人口が横須賀市を上回って県内4番目の都市となった。
 
今や東京都でさえ人口が自然減に転じているが、同市では、出生が死亡を上回る自然増、転入が転出を上回る社会増がともに続き、今後も2030年頃まで増加が予測されている。
 
全国的に有名な市内の江の島では、1964年(昭和35年)の「東京オリンピック」でヨット競技が行われ、2020年の「東京オリンピック」でもセーリング競技が行われる予定だ。
 
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東京から50キロ圏にあり、東に古都・鎌倉、西に富士山を望む、緑豊かで気候温暖の地として知られる。
 
観光客数も右肩上がりで、年間1700万人を超える人が訪れる一大観光地でもある。
 
本格的な人口減少社会となり、地域間競争時代に突入した現在、一朝一夕には、人口も観光客も増えるものではない。
 
街が人気を呼び続けているのには理由がある。
 
それは、街の人が元気で、温故知新のまちづくりを地道に実践しているからに他ならない。
 
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藤沢の歴史を紐解くとともに、街の戦友たちと一緒に魅力と価値を向上させようと取り組んでいる、古くて新しい2つのまちづくりの事例をご紹介しよう!
 
 
 
●日本をリードする街となるポテンシャルを秘めた「湘南の首都・藤沢」
 
昨今、藤沢と言えば、眞子さまのご婚約者の小室圭さんが「湘南江の島・海の王子」に選ばれ、藤沢市のPR活動に携わった経歴が話題を呼んだ。
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藤沢の歴史をさかのぼれば、鎌倉時代、盆踊りの元祖として知られる一遍上人が開いた時宗の総本山「遊行寺」(清浄光寺)の門前町として栄え、江戸時代は東海道の宿場町・藤澤宿として発展した。
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明治以降、鉄道の敷設を機に保養・観光・住宅地として成長。戦後も東京のベッドタウンとして開発が進んだ。
 
1960 年代の高度成長期には工業都市として発展。70年代には商業施設が集積し、首都圏有数の商業都市となる。近年は撤退した工場跡地にさらにマンションや大型商業施設が建設されている。
 
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JR東海道線で東京まで約50分、横浜まで約20分。また、小田急電鉄・江ノ島電鉄・湘南モノレール・横浜市営地下鉄・相模鉄道の5私鉄と、高速道路による抜群の交通アクセスで、主要都市と結ばれている。
 
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圏央道(首都圏中央連絡自動車道)が全線開通したことで、クルマでの利便性もさらに高まった。
 
また、「さがみロボット産業特区」「京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区」の2つの特区の結節地としての発展が見込まれている。
 
フロリダのマイアミビーチと姉妹都市でもある、「湘南の首都・藤沢」は、名実ともに日本をリードする街となるポテンシャルを秘めている。
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●会員減で街灯さえ消えた藤沢南口らんぶる商店会が「ネオ・ギター流し」で人気復活♪
 
NHK「おはよう日本」の『人気上昇のまち藤沢!魅力めぐる旅』で、昨今の藤沢の話題として大きくフィーチャーされたのが、ギター片手に盛り場の店を練り歩き、客のリクエストに応えて演奏する、昔懐かしい“流し”の復活だ。
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この「ネオ・ギター流し」による商店街活性化で、全国的に注目を集めているのは、JRおよび小田急の藤沢駅近くの「藤沢南口らんぶる商店会」(小栗誠会長)である。
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ストリートミュージシャンとはひと味違う、“昭和の夜の風物詩”がよみがえり、老若男女が盛り上がっているのだ。
 
戦後の高度成長期には、藤沢駅周辺の商店街は“花街”として栄えた。同商店会も活気にあふれ、四半世紀前は約200店が加盟していた。
 
ところが、景気の悪化などにより、地域の名店も次々に灯が消え、商店会の会員は45店ほどになってしまった。
 
数年前に、電球が切れたり、酔っぱらいに割られたりして、街路灯の大半が消えてしまったことがあった。
 
街路灯の管理や道路舗装は商店会が費用を負担するのだが、会費不足で修理もままならず、夜は街が真っ黒になった。
 
商売にも悪影響が出て、治安悪化につながり、さらに加盟店舗が減る悪循環に陥り兼ねない状況だった。
 
しかし、加盟店を増やすためにイベントを実施しようにも、飲食店の複合ビルが通りに立ち並ぶ商店街なので、イベントに使える広場もなく、共通の催事を実施することも難しい。
 
「会場がなくても開催でき、商店会も店もお客も一体になれるイベントはないか?」と、小栗会長(写真左)をはじめ、らんぶる商店会のメンバーは考えていた。
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ちょうど、2015年、藤沢市主催の藤沢駅周辺の12商店街のにぎわい創出を目的に、私がまちづくりアドバイザーとして、「藤沢駅商店街元気サミット」が開催された。
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このサミットの意見交換の中で、「かつて藤沢駅周辺で活躍した懐かしの『流し』を復活させ、流しアーティストが商店街のお店をめぐってもらえば、客と店、店と店、店と商店会をつなげられるのではないか」と、私から提言したところ、初めてにもかかわらず、皆さんが「やってみよう!」と決断してくれた。
 
写真右から、「藤沢駅商店街元気サミット」後の懇親会で激論を交わす、藤沢南口らんぶる商店会の「若狭」の小栗誠氏、「マタリビル」の渡辺大介氏、「大海」の羽原克明氏。
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「平成流し組合」代表のパリなかやまさんと、“女流し”の結海さんを、私が橋渡ししたところ、商店街のメンバーと意気投合。
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そして、市の「商店街にぎわいまちづくり支援補助金」を活用し、2016年度から「ネオ・ギター流し」が実現したのだ。
 
イベントは、毎回、大盛況で、未加盟店舗の店主や飲食店利用者にも、商店会の魅力がじわじわと伝わっているようだ。
 
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パリさんと結海さんがギターを手にお店に登場すると、店には事前に連絡していても、お客さんたちはビックリする。
 
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しかし、リクエストした曲の弾き語りが始まると、自然と聞き入り、リズムに合わせて手をたたき、歌い出す。
 
あるお店では、送別会のグループがいて、皆が歌い出したら、お店中が大合唱になり、感極まり涙する人もいた。
 
かつては、北島三郎さん、五木ひろしさん、渥美二郎さん、藤圭子さんなど、“流し”からスターになった人も少なくなかった。
 
小栗会長を中心とする商店会のメンバーは、「“ネオギター流し”を、藤沢南口らんぶる商店会の名物にしたい。そして、藤沢発のアーティストを育てて行きたい!」と、意気込んでいる。
 
 
 
 
●柳通り商店街の島倉千代子・村田英雄+五月みどりの“お宝楽曲”を動画サイトにUP!
 
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ここに1枚の写真がある。壁の上には「Columbia」の文字がある。
 
そう、言わずと知れた、日本蓄音機から始まった日本最古のレコード会社である日本コロムビアだ。
 
そして、前列中央は、昭和を代表する大歌手・村田英雄さんと、その左隣のうら若き乙女は、五月みどりさんである。
 
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藤沢市・江の島では、2020年の「東京オリンピック」でセーリング競技が行われるが、1964年の「東京オリンピック」でもヨット競技が行われた。
 
藤沢の玄関口・藤沢駅と、遊行寺を結ぶ「藤沢柳通り商店街」は、宿場町から続く華やかな歴史・伝統・文化を受け継ぎ、前の東京オリンピックが行われた昭和30年代頃までは、料亭・見番・置屋が軒を連ね、“花街”として大いに盛り上がっていた。
 
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藤沢商工会議所の増田隆之会頭のご実家の「角若松」は、中でも代表的な料亭旅館だった。
 
上記の写真は、当時、増田会頭の父上が、同商店街の理事長を務めていた頃に、商店街の歌を2曲作り、日本コロムビアからリリースされたレコードのレコーディングの際に、撮影された写真だ。
 
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そのレコードとは、何と、藤沢駅北口の商店街「藤沢柳通り睦会」のために島倉千代子さんが歌う「藤沢やなぎ小唄」と、村田英雄さんと五月みどりさんが歌う「藤沢ばやし」の2曲がカップリングで収められた、信じがたいほどぜいたくな“超お宝盤”だった。
 
両曲は、舞妓や芸妓が三味線に合わせて歌って舞う、往時のこのまちの粋で雅な風情と繁盛ぶりを表している。
 
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現在も、毎年7月末に開催される全国各地の盆踊りが身近に堪能できる「遊行の盆」、遊行寺の「開山忌」が姿を変えた「藤沢市民まつり」といった、神奈川県内外や海外からの観光客にも大好評のお祭りにその面影をとどめている。
しかし、これだけの“お宝楽曲”が眠ったままで、噂に存在を聞いても、若い世代は聞きたくても聞きようがなかった。
 
協同組合「柳通り睦会」の歴代のメンバーは、それを憂いていた。
 
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同会の沼上治家理事長(写真右)、小野田努副理事長、増田隆一郎理事(写真左)、丸山栄一監査役らは、藤沢市主催の「藤沢駅商店街元気サミット」に積極的に参加してくれた。
 
その際に、「インバウンドの外国人観光客のためにもWiFiを整備するなど、商店街の利便性を高めると同時に、商店街が有する“お宝楽曲”に合わせて当時の写真を使用した動画を制作して、インターネットの動画サイトにアップしたい」と力強く述べた。
 
その後、商店街の先輩や仲間、市役所の職員の方々まで総出で昔の懐かしい柳通りの写真をかき集めていただいた。
 
そして、市のにぎわいまちづくり補助金の支援を得て、「柳通り睦会」の皆さんとともに、私が音源と画像を編集して動画を制作させていただき、動画サイトのyoutubeにアップすることができたのだ。
 
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湘南の中心「キュンとするまち。藤沢」に、ぜひ遊びにいらしていただきたい。
 
今も昔も、店の暖簾をくぐれば、旅人もふじさわびともすぐに打ち解ける、誰もが気軽に楽しめるまちだ。
 
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湘南の風に吹かれながら、門前町・宿場町・昭和レトロの歴史・伝統・文化と、そして、あったかい人情と粋な風情を感じていただけるにちがいない!
 

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