賃金管理研究所 副所長 大槻幸雄
賃金管理研究所では、5月11日に「社長・重役の報酬・賞与・年収額の実態 ――2014年(第30回)実態調査」を発表いたしました。
本調査の対象となる2014年度前半の企業の経営環境を振り返ると、消費増税にともなう駆け込み需要の反動減が予想以上に大きく、回復基調とはいえ個人消費の弱さやGDPの落ち込みもあり、デフレ脱却と持続的な経済の好循環はいまだ不確実な状況にありました。
本調査の対象となる役員報酬は、このような環境の下で決定されたものです。役員報酬の増額改定には引き続き慎重な企業が多く、上場企業、非上場企業とも報酬月額を据え置いた会社が半数以上です。しかし、報酬の増額改定や役員賞与の支給に前向きな企業も少しずつですが増えてきています。
社長報酬を引き上げた会社は3社に1社を超え(35.9%、上場32.8%、非上場37.9%)、前年調査(22.2%)より増加基調にあります。その他役員についてはも、「全役員を引き上げた」「一部の役員を引き上げ、他は据え置いた」を合わせると44.1%(前回37.9%、前々回36.3%)と増えてきています。
役位 |
在任 年数 |
報酬月額 |
賞与額 (賞与ゼロを除く平均) |
年収額 (賞与ゼロも含めた平均) |
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会長 社長 副社長 専務 常務 担当取締役 兼務取締役 執行役員 常勤監査役 |
8.2 11.6 5.9 5.6 4.6 4.9 4.9 3.6 4.2 |
246.2 293.8 243.1 182.1 158.8 149.3 113.0 121.9 127.1 |
837.2 1249.3 1007.5 475.0 420.4 327.6 375.9 293.5 250.1 |
3249.0 4004.4 3292.6 2350.2 2081.3 1961.3 1637.0 1614.8 1577.6 |
役員報酬の代表的な指標である社長では、報酬月額293.8万円、賞与支給額1249.3万円、年収額4004.4万円でした。ただし、上場企業と非上場企業の格差は大きく、報酬月額では1.57倍(上場383.8万円、非上場244.8万円)、賞与で2.94倍(上場2011.3万円、非上場683.8万円)、年収額で1.75倍(上場5539.4万円、非上場3169.8万円)の差がついています。
役員登用にはそれぞれの会社の事情もあり、役員報酬を合理的に決定することはオーナー社長にとっても悩ましい問題です。問題解決のためには、役員の職務範囲や職責を明確にすることがその第一歩です。役位ごとの職責と業績貢献度に相応しい水準の報酬を得るためには、たとえ非上場の中小企業であっても、まず役位ごとの職責を明確にし、決定基準をルール化していくことが大切だといえるでしょう。
(担当責任者 賃金管理研究所 副所長 大槻幸雄)
「社長・重役の報酬・賞与・年収額の実態調査レポート」(全18ページ:頒布価格2,160円)は次年度の役員報酬改定の参考資料として多くの企業が活用されています。詳しくは賃金管理研究所のホームページをご確認ください。