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人事・労務

第26話 年次有給休暇の消化と賞与支給のための評価

「賃金の誤解」

 「賞与支給額を決めるにあたって、年次有給休暇を取った社員はマイナスに評価されて当然だ。なぜなら賞与時の評価要素のひとつに勤怠状況があり、欠勤が多い社員より、有給休暇を取らずに遅くまで頑張ってくれている社員のほうが高く評価されるべきなのだから」。と強く主張する社長も居られました。
 
 たしかに、賞与は給与とは異なり、会社業績や社員の勤務成績を反映させる制度ですから、頑張ってくれた社員が報われて当然です。ただし、有給休暇の取得を理由に賞与が減額されるようであれば、有給休暇の消化は進まなくなってしまいます。
 
 本来の年次有給休暇の趣旨は、労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図ると共に、人たるに値する社会的文化的生活を営むための金銭的、時間的余裕を保障するところにあるとされており、年休取得は欠勤扱いではなく出勤として扱わなければなりません。
 「有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないように」と労基法付則第134条は定めています。 
 
 賞与の支給基準となる出勤率の計算において, 年休取得日を欠勤扱いにしたことの当否が争われたエス・ウント・エー事件 (最高裁第3小法廷平成4.2.18 判決, 労働判例 609 号 12 頁) があります。「使用者に対し、年次有給休暇の期間について賃金の支払を義務付けている労働基準法 39 条の規定の趣旨からすれば, 使用者は, 年次休暇の取得日の属する期間に対応する賞与の計算上、この日を欠勤として扱うことはできないものと解する」 と判断されています。
 
 もしも有給休暇取得を直接の理由に賞与支給で不利益な取扱いをしていたのであれば、是正の方向で再検討を要します。
 ただし、組織の一員としてチームワークを乱したり、仕事が中途半端で同僚や、お客様に迷惑をかけたりすることが多かったのであれば、半年ごとの成績評価において、そのことが評価に加味され、賞与配分に反映されることは当然のことです。
 

 

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