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人事・労務

第46話 役付社員であふれた会社、あなたは何を思いますか

「賃金の誤解」

 日本の経済界をリードしてきた歴史ある大企業では、高度な判断を伴う責任の重い仕事ほど、複数の役付社員で役割を分担し、補完し合っていたりすることがあります。和と平等を重視する責任分散の絶妙な仕組みなのですが、反面、高コストで非能率な組織とも言えます。非能率なだけで済めばよいのですが、風通しの悪さゆえの報告の不徹底、都合の悪い情報の隠蔽、責任逃れ、問題の先送りがはびこり、積もり積もって致命的な事件となった事すら珍しくありません。
 自分たちの会社には関係ない大企業の話だ。と貴方はお考えかも知れません。ところがそうでもないのです。必要以上の社員に名刺肩書きを付けているケースは少なくありません。
 
 ある食品加工会社の社長にお話を伺ったときのことです。その会社では、みんなのやる気を高めるために、良かれと肩書きを乱発していました。確かに、肩書きが付くことは、勤め人にとっては誇らしいことです。
 しかし、ものには限度というものがあります。多くなりすぎた名ばかり役付社員が日々取り組む仕事は今までどおり、時には役付だからと一般社員並の仕事さえやらず、お世辞にもやる気あふれる良い会社だとほめられる状態ではありませんでした。
 そんな夏の暑い日の早朝、社長が工場の門をくぐり、食材を保管する冷蔵室の前を通りました。そこには昨日仕入れた生の食材が納品されたままの状態で、無造作に山積みされていたのです。それに気付いた社長は工場長と担当部署の役付社員を呼び出し「なぜ、すぐに冷蔵室に食材を運ばなかったのか」わけを聞き、生の食材である以上、全量廃棄しなければならないことについて問い詰めました。
 そしてそのとき、思いもよらない役付社員の弁解、そして工場長の無神経な一言に背筋が凍るほどの恐怖を感じたと社長は苦悩の表情で話されました。
 「誰かやると思った」役付社員は迷惑そうに釈明しました。そして同席していた工場長の言ってはならない一言「うちの役付社員の意識なんてそんなものですよ」。リーダーとしての自覚のない役付社員の発言、火に油を注ぐ工場長の暴言に社長の怒りが頂点に達したことは言うまでもありません。
 「どうしてこんなだらしない会社になってしまったのだ」。社長は事の重大さから、名刺肩書きを与えただけでは人は動いてくれない事に気付きました。
 
 社員に誠実に仕事に励んでもらうためには役割と責任が明確な精鋭組織づくりが必要であり、合理的な賃金制度と正しい評価制度を勉強するために、日本経営合理化協会の賃金セミナーに参加したと社長は話してくれました。

 

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