この数字は、「パワーカップル」と呼ばれる購買力のある共働き夫婦の世帯年収である。ニッセイ基礎研究所は、夫婦ともに年収700万円超の世帯を「パワーカップル」と定義。近年、高額消費の担い手として注目されている、パワーカップル世帯の動向を捉え、その嗜好や生活スタイルを分析している。なお、この定義設定にあたっては、夫も妻も高い購買力を持つこと、消費税や税率区分が20%から23%に上がる「695万円」というボーダーラインを考慮しているものと思われる。
彼らは、富裕層の子供や孫である「親リッチ」に該当する割合が高く、将来的に親や祖父母からの資産移転が見込まれていることから、消費や資産運用などの経済活動を牽引する新富裕層として、各業界から熱い眼差しが向けられている。
ただ、このパワーカップルは、単に高いものを好むのではなく、自分の価値観に合ったものに出費を惜しまないことが特徴とされる。日常生活では堅実で無駄遣いはしないが、金融商品への関心は高く、 ITを駆使した情報収集にも積極的である。
パワーカップル世帯のエンゲル係数は、19.1%と2割を切り、平均サラリーマン世帯(521万円)の25.3%を引き離している。また1ヵ月の消費支出金額は約60万円と、平均サラリーマン世帯の27万円の倍以上の額となっている。 これを車の購入資金にあててみると、約100万円の差、婦人服1着にかける平均単価で比較すると、2万2,130円に対し6,370円と3.5倍の差となっている。
世帯金融資産は、基本的に妻の年収が高いほど多い傾向にあり、世帯金融資産1,000万円以上は、妻の年収が300万円未満では27.5%だが、年収300~700万円未満では43.9%、パワーカップル妻と見られる年収700万円以上では67.4%である。年収700万円以上では世帯金融資産5,000万円以上も多く、実に32.6%を占めている。
パワーカップルは、妻も正規社員や管理職に就いている割合が高く、仕事と家事・育児で、とにかく「時間がない」世帯が多い。この世帯の増加により市場が拡大するのは、「時間がない」ことを解決する消費領域である。たとえば、時短・効率系の商品・サービスとしては、洗濯乾燥機や食洗機、ロボット掃除機などの自動家電やカット野菜、半調理済みの食材の入った料理キット、風呂や窓掃除など掃除目的ごとに適した素材で出来た使い捨ての紙シートなど、時短家事商品があげられる。
当然、空いた時間に買物ができるネットショッピングや、オンライン系サービス(英会話、カウンセリング等)などの利用もますます増えるはずだ。いずれにしても、社会情勢により今後、共働き世帯が増えていくことは必至であり、消費力のあるパワーカップル世帯の増加によって、これらの「時間がない」を解決する商品・サービスは活性化していくだろう。