「仕事のすすめ方」
◆仕事を円滑にすすめる「コミュニケーションのスキル」◆
前回、コミュニケーションにおける自分の行動は、相手の心に届くだけでなく相手の行動も変える事を話しました。
今回はその行動を「本気でする」ことを申し上げます。
皆様は、坂村真民先生の「本気」、相田みつを先生の「本気」のふたつの同じタイトルの詩をご存知でしょうか。
私はこの二編の詩が大好きです。りっぱな先人が角度をかえて「本気」の本質を私たちに示してくれていると思います。
以前、私が体験した、旅先のお店の方から伺った職人さんの「本気」と、駅ナカのお蕎麦屋さんでたまたま目にした「本気」をお話します。
前者は、観光で行った輪島でのことです。日常使える食器から、飾って楽しむ作品まで、所狭しと陳列されているお店に入りました。ひとまわり店内をみて回ったのを見計らったように、店主らしい方が私に近づいてきました。お客様応対として、私はおもてなしが出来ていると嬉しく思いました。輪島塗の素晴らしさを一人でも多くの観光客に伝えたい気持ちがきっとあるに違いないのに、お客様の見たいように好きなように器を愛でる時間を優先してくれたからです。それは即このお店の好感度に繋がりました。近づいて来た彼の第一声は「職人の皆さんはこれらの食器が二百年先も使えるように、何回も何回も塗っているのですよ」でした。「本気」のグレイドが高すぎる!と感動しました。皆様は何かに二百年先を想定することがあるでしょうか。私がそのお店から買い求めたお箸を使い始めて3年以上が過ぎますが、毎日使っているのに洗ったらまだそのまま店頭に飾れるくらい照りもよく、傷ひとつ付いていません。
後者は、時間待ちとお腹のすき具合から、たまたま入ったお蕎麦屋さんでの「本気」です。買った食券をカウンターに出して、ぼんやり立っていたら、厨房の奥の若い男性の動きが目に留まりました。トレイを拭いていたのですが、力いっぱいの動きです。よく見ると、洗ったあとのトレイの水気を拭いていました。キュッキュッと音がしています。水分を取るだけにそれほど頑張らなくてもと感じましたが、お店のお客様に対する誠意が見えるようでした。その情景を目にしただけで、このお店の方は皆さんキチンと手洗いをしているだろうな、食材選びも気を使ってくださってるなと安心や信頼が、ノン・バーバルの言葉ではないコミュニケーション(仕事への本気の姿勢)がしっかり伝わってきました。私は注文したお蕎麦をいつもより感謝をしながら、ゆっくり食べました。ワンコインで食べられるお蕎麦でしたが、彼の姿がその味をぐっとひき立ててくれました。後日談として、その一週間後、キュッキュッの彼の拭き方を見たくて、私はお腹もすいていないのに、そのお蕎麦屋さんに行きました。残念ながら、休日だったのか休憩だったのか、彼の姿はありませんでした。
改めて「本気」はコミュニケーションに関係していると感じています。本気で取り組んでいる人をキャッチできるアンテナを日々張っていると、学びのチャンスが広がります。
▼松尾友子講師の通信講座「ビジネス・コミュニケーション講座」CDはこちら