賃金管理研究所 所長 弥富拓海
日本の出生数が100万人を切ったことが、厚労省が公開した「平成28年人口動態統計月報年計(概数)」から分かりました。
この調査によれば、平成28年の出生数は976,979人で、前年から28,698人減少しています。出生数が100万人を切ったのは、明治32年(1899年)に近代的な人口統計が開始されてから初めてのことだそうです。また、出生数が一番多かった第1次ベビーブーム期の約270万人、第2次ベビーブーム期の約200万人に比べ、半分以下になりました。
他方、平成28年の死亡数は1,307,765人となり、初めて130万人を超えました。27年の死亡数は1,290,444人であり、対前年比17,321人増となっています。さらに75歳以上の高齢者の死亡数は昭和50年以降増加し、平成24年からは全死亡数の7割を超えているそうです。
出生数から死亡数を引いた「自然増減数」は330,786人のマイナスでした。これも過去最大の減少幅だそうです。日本の人口減少傾向はこれからも続くと考えるのが自然でしょう。
「就労人口減が現実だからこそ、労働参加率を高めねばなりません。長時間労働を是正し、ワークライフ・バランスを実現することにより、老若男女、誰もが自分のライフステージに合わせた働き方を選択できる社会をつくっていきたい」と安倍内閣は主張しています。
例え就労人口減の時代であろうとも、企業には増収増益の好循環を実現し続けねばならないという宿命があります。人が採れないどころか、仕事を覚えた大切な社員を他社にとられた。復職の制度もなく、子育てや介護を理由に優秀な社員が静かに辞めていってしまうでは話になりません。
働く選択肢の一つであるパートの時給が1,000円を超える時代です。しかも有期労働契約が繰り返され、通算5年を超えた場合、労働者の申し込みにより期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できると定められています。こうした非正規社員にも相応の責任ある仕事を任せ、活躍できる体制を作ることが企業繁栄の好循環実現のカギになるでしょう。
労働参加率を高めるには高年齢者の活用も大切です。65歳までの雇用を義務付ける改正高年齢者雇用安定法が施行されており、会社は【①定年の引上げ ②継続雇用制度の導入 ③定年の定めの廃止】のいずれかの方策を定めて、希望者全員を継続雇用しなければなりません。
嘱託再雇用を選択した場合には、仕事の中身と給与金額についての判断は会社に任されています。担当する仕事の難易度、責任の重さ(責任等級)を基準に世間水準を考慮した時給を設定し、ライフステージに合わせて勤務日数や勤務時間を弾力的に選択できるようにしておくべきでしょう。なお、元気に責任を持って活躍してもらうために65歳定年に移行する会社も増えています。これも注目に値します。