ムービーカメラで撮影した社内外のイベントや、家族の行事を、DVDディスクにダビングして長期保管に備える方は多いようです。
コンパクトで長時間の録画が可能なDVDディスクは、保管スペースが少なくて済む点でも重宝します。
一方、こうしてDVDでの保管が増えると、「数年前にダビングしたDVDディスクが再生できない!」という事態に遭遇することも少なくありません。実際、筆者もしばしば相談を受けます。
大切な記録を消失しては一大事。再生できないDVDディスクの原因と対策をご紹介します。
■原因その1「ファイナライズ忘れ」
実際に筆者が相談を受けた問題ケースの殆どは、「ファイナライズ忘れ」が原因です。
「ファイナライズ」とは、録画したDVDディスクが、どのメーカーのDVDプレーヤーでも再生できるようにする、言わば「仕上げ作業」です。
録画当時は、録画した機器で再生チェックを行うケースが多く、この場合は、ファイナライズされていなくても再生が可能なため、「ファイナライズ」を忘れてしまいがちです。
その後、数年が経過すると、DVD再生機器を他メーカーに買い替えているケースも多々あり、この場合「再生できない!」という事態に遭遇する訳です。
対策としては、再生できないDVDディスクを、録画したメーカーのレコーダーにセットして、ファイナライズを行います。メーカーが同じであれば、機種が異なっても原則問題はありません。録画したメーカーのレコーダーが手元に無い場合は、所有している知人を探して、ファイナライズ作業を依頼すると良いでしょう。
■原因その2「ディスクの劣化」
DVDは光ディスクと呼ばれ、レーザー光を使って非接触でデータの記録や再生を行うため、寿命は100年以上・・・と言われることも多くあります。
しかしこれは、充分に高品質なディスクを、適切な環境で保管した場合に限ります。
ノーブランド品など、格安録画用DVDディスクは品質が低く、湿気、温度、紫外線などによって劣化が進み易いものです。原則、大切な記録の保管にはおすすめできません。
しかし、どうしても再生できない事態に遭遇したら・・・
可能性があるのは、雑貨店などで販売されている、格安DVDプレーヤーでの再生です。中国などでの販売を想定した格安プレーヤーは、規格外の粗悪ディスクも再生できる製品が多く、絶対とは言い切れませんが、再生できるチャンスがあります。
もし運良く再生ができたら、その隙に、他のDVDへコピーしてしまいましょう。
■保管の心得 【テープメディアは捨てずに保管しておく】
元の録画がテープメディアなら、DVDディスクにダビングした後も捨てずに保管しておきましょう。
DVDディスクのデータが完全に消失してしまっても、元のテープメディアがあれば、再度新しいDVDディスクにダビングすることもできます。
テープメディアを再生する機器が故障や廃棄で手元にない場合は、専門業者にダビングを依頼することができます。
【ブルーレイにダビングしておく】
DVDよりも新しいブルーレイは、耐久性も向上しています。DVDディスクが再生できるうちに、信頼できる大手ブランドの高品位なブルーレイディスクにダビングしておくと安心です。
特に大切な映像は、複数枚のブルーレイディスクにダビングしてリスク分散したり、数年に1度、新しいブルーレイディスクにダビングし直しておくと、さらに安心です。
【ディスクの保管は快適な室内で】
DVDディスクの長期保管に際しては、米国標準技術研究所(NIST)が、研究の結果、理想的な保管温度は摂氏4度~20度、湿度は20%~50%、最も長寿命が期待出来るのは、温度が18度、湿度40%としています。図書館の記録資料や政府関連資料などでは、こうした指標を参考にしているようです。
一般的には、人間が快適に過ごせる室内(温度・湿度)で、直射日光を受けないように気を付ければ充分でしょう。温度と湿度が調整できる特殊な保管庫に収納すると、取り出した際の急激な温度・湿度変化が、ディスクにより大きなダメージを与える可能性があるためです。
なお、米国標準技術研究所は、書き換え可能なDVD-RWよりも、書き換えが不可能なDVD-Rの方が、データの保管性において長寿命と述べています。
■さいごに
DVDやブルーレイディスクは、長時間の録画が可能なだけに、データが消失した際のリスクも高いものです。デジタル方式は、便利で高性能な反面、脆い部分もあるのです。
「安心」を手に入れるためにも、年に一度のチェックや、可能であればバックアップを取るようにしましょう。
鴻池賢三