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第24回 湯の峰温泉(和歌山県) 7色に変化する神秘の濁り湯

高橋一喜の『これぞ!"本物の温泉"』

 ■1800年前から湧く湯垢離の湯
 白色、赤色、茶色、青色、緑色……などの濁り湯が好きな人は少なくないだろう。決して透明な湯の価値が低いわけではないが、濁っている湯のほうが温泉情緒をかき立てられるのも事実だ。
 濁っているだけでも貴重な存在といえるが、日本には色が変化する不思議な温泉も存在する。湯の峰温泉(和歌山県)の「つぼ湯」である。
 つぼ湯は歴史の深い共同浴場である。和歌山県の山深い地に位置する熊野本宮大社は、世界遺産にも登録された熊野古道にある神社で、熊野速玉大社、熊野那智大社とともに「熊野三山」と呼ばれている。これらに参詣することを「熊野詣」といい、古代から中世にかけて上皇・貴族から庶民にいたるまで多くの人が、この地に足を運んだという。
 そんな熊野の地にあるのが、日本最古の温泉ともいわれる湯の峰温泉。なんと開湯は1800年も前のことだ。小さな川の両岸に十数軒の小さな宿が佇む静かな温泉地であるが、熊野詣をする人々の湯垢離(ゆごり)の場として多くの旅人を癒してきた。つまり、参詣する前、身を清めるために温泉に浸かっていたのである。
 
 ■日本初「世界遺産の温泉」
 「つぼ湯」は、温泉街を流れる川のほとりに建つ小屋の中に湧く。日本最古の共同浴場として知られ、日本で初めて浴場そのものが世界遺産として登録された。湯船がひとつしかないため、交替制の貸切風呂として利用されている。
 
 
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 木で囲われた3畳ほどのスペースには、2人浸かればいっぱいになるくらいの小さな天然の岩穴があり、そこから直接ポコポコと温泉が湧き出している。いわゆる「足元湧出泉」だ。生まれたての湯は、入浴したときの気持ちよさがあきらかに違う。もぎたてのフルーツをその場でかじるのと缶詰にされたフルーツを食べるのと同じくらいの差がある。
  しかも、つぼ湯は無色透明、青、白、灰色など1日のうちに7色に変化するといわれている。
 最初に訪れたときは、青色をおびた白濁。とても神秘的な色をしていた。真っ裸のまま、しばし湯の美しさに見とれたあと、おそるおそる足先から湯に浸かる。源泉は90℃を超えるといわれているので、かなりの熱さだが、一度体を沈めてしまえば、熱さは気持ちよさに変わる。温泉が新鮮である証拠だ。
 2度目に訪れたときは、その日の一番風呂だった。そのためか湯は無色透明で、湯底の砂利までくっきりと見える。これほどまでにクリアな湯も珍しい。
 ただ、誰も入浴していなかったので、加水しなければ入れる泉温ではない。水を注ぎ入れ、かき混ぜる。すると、みるみるうちに白濁に変化していく。3500以上の温泉に入ってきたが、源泉の色が変化していく瞬間を観察できたのは初めてのことだった。
 
 ■温泉の色はなぜ変化するのか?
 世の中には、色の変わる温泉がいくつか存在するが、その理由はさまざまだ。①時間の経過とともに酸化が進む、②水が加わることで成分が変化する、③人が入浴し、肌に付着していた成分と反応する、④季節や天候が影響する、⑤複数の要因が絡み合っている、などなど。
 つぼ湯がどうして7色に変化するのか。その理由はわかっていないことも多いようだが、少なくとも加水することで湯の成分が変わり、濁り湯になることは間違いない。
 1000年以上前につぼ湯に浸かった人はどのような気持ちだったのだろう、と想像を巡らせるだけでも楽しい。アツアツの源泉が湧き出しているだけでも畏怖の対象だったはずだが、7色に変化する源泉を目の当たりにして、心底驚くとともに自然の神秘を感じたのではないだろうか。
 ちなみに、長野県の五色温泉・五色の湯旅館も色が変わる温泉として知られている。こちらは、緑や白、黒などに変化する。濁り湯が好きな人は、色の変わる神秘の湯を体験してみてはいかがだろう。
 

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