債務が多くて、これでは借入残高は減らないだろうという会社でも、倒産しない中小企業というのはたくさんあります。
資金繰りがうまくいっていれば倒産は免れるわけです。前回のコラムで書いたように流動比率、
当座比率が高ければ キャッシュフローに問題がなく普通に営業を継続できるのです。
ところが、そんな会社でも倒産に追い込まれるケースがあります。これらの原因を分類すると大きく4つに分かれます。
1、銀行借入などの有利子負債の返済条件が厳しくなった場合
2、事業継続に影響があるほどの売掛金の回収不能が発生した場合
3、売上が大きく減少した場合
4、経営者が高齢になり、債務が多すぎるため後継者のめどがたたない、あるいは経営者の高齢化による銀行の対応が厳しくなった場合
これらの原因で資金繰りがうまくいっていた会社でも破たん、倒産への道というケースがでてきました。この4つの中でも、最近多くなってきたのが4番目の経営者の高齢化に起因する破たんです。
じつは、私が経営に関与している企業にもそんな会社を買ってくれないかという話がよくもちこまれます。
そして、M&A仲介会社のエグゼクティブサマリーを読むと「こんな会社は買ったらいけない」という内容の企業を見ることが多くあります。
M&Aの場合、株式対価とは別に経営者の個人保証の解除という希望がつきます。
では、売りたいという企業の財務内容を評価しなおすと、表向きは資産超過でありながら、
じつは債務超過であり株式対価は0円。利益は多少出ているものの 棚卸資産等で調整しているのではないかというケースをみかけます。
仮にいくらかの価格でその会社の株式を購入したとしても、
銀行借入の個人保証をはずすために借入金は肩代わりせざるをえず、それが原因で買う側の企業の財務内容も劣化させられるということになるわけです。
そして、これら経営者の高齢化に悩む企業は、「優秀だが、借入金の多さを恐れないで保証人になることを承諾する後継者」でも見つからない限り、数年後には破綻し倒産することになります。
そう考えると現在は表に出ていないが潜在的な倒産予備軍の中小企業はかなりあるはずです。
倒産によって中小企業経営者は財産と収入を失うわけですが、経営者が自社の破たんにいたる道すじを予想できるわけもなく、破たん前に救済する手段というのは限られます。
しかし、不謹慎なようですが、ある程度の収益を維持できる事業なら債務超過でも破たん後に救済する術はあります。
もちろんカネを出す側の条件にあうかどうかが問題ですが。