再生途中の企業や第二会社にとって消費税の負担は年数を経るごとに大きくなっていきます。そもそも再生できるかどうかは事業が健全な形で拡大できるかどうかにかかっているからしかたないのですが、原則的には増収増益が再生成功のバロメーターになります。逆を言えば再生しているのに毎年同じような売上規模、財務内容では成功することはありえないのです。
再生に成功する企業は毎期ごとに増収増益で消費税の負担が大きくなっていき、その納税を資金繰りでまかなえていたとしても、いずれ限界が訪れます。銀行から納税資金を借りればいいじゃないかという方もいますが、再生途中の企業に融資をする銀行などなく、あったとしてもそれによってさまざまな制約をうけます。
法人税や地方税の納税額のコントロールは、利益を操作できるものをもつことでできますが、消費税の納税額はコントロールが難しくなります。消費税は原則課税ではキャッシュアウトによってしか制御できないものだからです。
例えば、売上高1億円の製造会社の決算期末に、消費税負担が予想以上に多くなるとわかって急遽2千万円ほど材料を購入して納品したとします。この場合、期末納品なので棚卸在庫に計上されると予想されます。「売上高-売上原価」が売上総利益(粗利益)の算出方法なので、棚卸資産は、売上原価に含まれず利益には影響はしないのですが、消費税率は税率10%分として、納税額が2百万円ほど節税にはなります。もちろんこのやりかたは合法ですが、同時に買掛金という負債が発生し、決算期後に、この会社としては大きな資金が必要になります。
簡易課税(注1)でみなし仕入率が高い事業であれば、粗利益率を高めれば、想定以下の消費税負担にはなります。しかし、「では、どうやって粗利益率を高めるのか?」と考えると現実的ではない話となります。しかも、この制度は課税売上高が5,000万円を超える場合は適応されません。
どうしたらいいのかというと、資本関係のない、代表者も異なる別会社を作り簡易課税を選択し、そこから材料を仕入れ、通常以上の利益をその会社に落とすことで、本体の会社の消費税負担を減らすことができます。このやり方は違法ではありませんが、この場合も「では、どうやって信用もないそんな会社が信用で仕入れられるのか?」という問題が残ります。
消費税については、今後、インボイス制度(注2)の導入などでその抜け道がふさがれようとしています。
「本来、消費税はお客様からの預り金なのだから、経営状況には影響を及ぼさないはずだ」と言う方も多いのですが、 じっさい中小企業の現場ではそのように考えることはできず、その資金も資金繰りのひとつとして運用されているのです。 これからは、一度失敗した中小企業は再生困難になる厳しい時代になると思われます。
注1: 簡易課税制度 国税庁ホームページ
注2:インボイス制度 (適格請求書等保存方式)
令和5年10月1日から消費税の仕入税額控除の方式として新たに採用される制度