ちなみに、毎年恒例となっている『日本経営合理化協会主催の店舗見学会』の2014年の開催は福岡、佐賀、長崎と回りましたが、その見学先にもピックアップしております。
今回は、私もモデルチェンジに関わった『パロマ・プラス・ワン』をご紹介することにしましょう。
『パロマ・グリル』の時代は、タワーになったオニオンがトレードマークのハンバーグや立体感のあるバーニャカウダーを看板商品に、ハイセンスなレストランを求める地元客に支持されてきました。雑誌やメディアの掲載も多く、福岡に浸透した洋食店でした。
情報の鮮度の劣化を危惧した森社長は2013年に“ガストロ・バル”をコンセプトに『パロマ・プラス・ワン』へフルモデルチェンジを決意しました。
私はこの話を持ちかけられて、そのイメージする料理を食べながらブレーンストーミングをすることになりました。
まだ、試作だけあって、液体窒素やパーゴジェットなどの最新調理機器を使う料理は拷問のような料理もありました。特に、16番くらいの大きさのデッシャーでとったポーションの大きい牡蛎のジェラートには絶句しました。
しかし、料理を食べながらリラックスしたブレストというのはすばらしく、イマジネーションが広がります。私は象徴的な“バーニャカウダー”が多くの居酒屋でもラインナップする定番となり、中には“食べ放題のお通し”となっていることを指摘しました。すると、森さんもそう思っていたのでしょう「いい方法はないですか?」と森さんから返ってきました。
森さんとは星付きレストランを一緒に回る中ですので、森さんならわかるなと思い、「世界の繁盛店をみると複雑な調理プロセスをして野菜を一皿に盛り合わせるのがトレンドだ」と話しました。「例えば、一緒に行った神保町の『傳』のサラダ、これは煮たり、揚げたり、酢漬けにしたり、ピュレにしたりと複雑な調理をして一皿に盛り込んでいますが、このコンセプトは、『ミッシェル・ブラス』のガルグイユと同じですよ」と話した。
そんな話に森さんは反応して、(ここからは対談方式で)
私:そう、ガルグイユをやったらどうでしょう。
あれは先行調理ができるので予約さえ入れていただければ
オペレーションは楽ですよ。
森:でも、あれって、一品での完成度が高すぎませんか?
私:確かに、大阪の『ハジメ』のように大皿にすると高級感が出過ぎますね。
…(考える)
わかりました。一晩考えさせてください。
そして、浮かんだのが無礼講での中国料理店でのターンテーブルを回すシーンでした。
「ぐるぐる回る様はまさにマナー知らずの人や無礼講の場を盛り上げるツールにぴったり。カジュアルな雰囲気に合うな」
翌日、早速提案。森さんは、「ターンテーブルってどこで売っていますか?」
と尋ねてきたので、早速、ネットで検索しました。しかし、いいものはありません。
そうなんです、いいものなどないのです。いいものはつくるものであり、だからこそ真似されません。私は、このプロセスでヒットを確信しました。メラニンの皿のようなターンテーブルに盛り付けることが決定しました。
60センチの白のターンテーブルは設計者の私が見ても「おおっ」と思うものでした。
しかし、ここで、「ポーションの調整が課題だな」と思いました。というのは、ガルグイユのモデルチェンジをするターゲットの料理であるバーニャカウダーを食べたときに、「お腹がいっぱいになり、他の料理を食べるどころではなくなる」というデメリットを内在していることに気づいていたからです。この盛り付けだと、同じことになりかねない。
ガストロバルの良さは、高級店で出てくるような料理のエッセンスをオマージュした皿を多皿で提供することにあります。そして、カジュアルラインのプライスゾーンに料理をいかにインスパイヤして落とし込むかが大きな課題です。
その阻害要因にポーションが大きい大皿はなりうるのです。
福岡市中央区今泉1-3-13
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