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ナンバー2の心得(11) 造反のタイミング

指導者たる者かくあるべし

 組織のナンバー2の心得の第一は、もちろんトップの行動を的確、迅速に支えることにある。しかし、トップが決定的な判断を誤った場合、毅然とそれを諌め、時にはトップに取って代わり権力を握る勇気が求められることもある。

 あくまで私欲を離れた大義は必要だが、謀反は必ず成就するとは限らない。成功と失敗の分岐点はどこにあるのか。

 1983年(昭和58年)10月、ロッキード事件で収賄罪などに問われた元首相の田中角栄に一審有罪判決が下った。2か月後の総選挙で自民党は36議席を減らして敗北した。自民党幹事長の二階堂進は幹事長を引責辞任する。

 「趣味は田中角栄」というほど政治家田中に心酔していた二階堂だが、政治の潮目が変わりつつあるのを、最大派閥の田中派を会長として束ねる彼は感じ取っていた。

 首相中曽根康弘が小派閥を率いて総理総裁の地位にあるのは、いずれ権力中枢への復帰を狙う田中が、自派閥からは総理を出さず、中曽根を担いで院政を敷く目論見による。

 一方で、野党のみならず、自民党非主流派からも、日に日にタカ派色を強め、党内意見を聞かない中曽根への反発が高まりつつあった。加えて、独自の総裁候補擁立を封じられた田中派内の若手たちの不満が高じる。

 幹事長を退いた後、党副総裁に復帰した二階堂には、事態の収拾が託された。

 しかし、水面下では、与野党を超えた枠組みで奇策が進行していた。二階堂を担いで田中派と中曽根を離反させ、政権交代を目指す「二階堂擁立工作」である。

 翌年(昭和59年)春、中曽根降板のシナリオを描いた一人、鈴木善幸(元首相)は、二階堂と会食し、遠回しに決起を促す。

 「かつて、二階堂君のおかげで鈴木内閣が成立したが、今度は副総裁である君に対する恩返しを私はするつもりだ」

 半年後に、自民党の総裁選が控えている。鈴木の発言の真意を二階堂は汲み取った。二階堂も〝闇将軍〟として田中派、そして国政を動かそうとする田中に強い批判の思いを抱き始めていた。さて、どうするべきか。

 自民党総裁選が近づいた同年9月、箱根で開かれた田中派の議員研修会で、二階堂は意を決して、田中と対座する。思いつめた表情で、田中に言いつのる。

 「あんたは、田中派あげて中曽根を支持することで、党全体への影響力を維持し、自分の立場を誇示するつもりかもしれないが、中曽根に対する党内外の反発は相当に強い。彼の政治姿勢は日本の将来にとって、決してプラスするとは思えない」

 盟友からの直言に田中の顔が引きつった。 (この項、次回に続く)

(書き手)宇惠一郎 ueichi@nifty.com

 

※参考文献

『鹿児島人物叢書4  二階堂進』上城恒夫 高城書房
『自民党-政権党の38年』北岡伸一著 中公文庫
『政治とは何か 竹下登回顧録』竹下登著 講談社

 
 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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