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戦略・戦術

第170話 「コロナ禍の井上式財務対策」

強い会社を築く ビジネス・クリニック

私は、コロナショックのようなマサカの坂が来ても、ビクともしないような会社にするために、ふだんから、経営指導を行っています。

しかし、コロナショックで危機に陥り、私のもとを初めて訪れるような経営者の方々のなかには、私のいうことをお分かりでない、理解されない方もいらっしゃいます。

 

今回は、国が用意しているコロナ対策をご紹介するとともに、

改めて私の考え方を述べさせていただきます。

 

1.納税猶予で支払いを先延ばしする

 

私は、税金というものは、リターンなきコストである、と考えています。

特に、中小企業にはお金がありませんから、

税金はできるだけ払わないようにすべき、

もし払うとしても、できるだけ先送りすべきなのです。

 

この意味で、コロナショックで大きな打撃を受けた会社は、

法人税、消費税、住民税をはじめ、社会保険料も

1年間の支払い先送りが認められています。

この「納税猶予」、資金繰りが苦しい会社は、是非とも活用してください。

 

納税猶予の対象は、2020年2月から納期限までの一定の期間(1ヵ月以上)、売上が前年同期比で▲20%以上となった会社です。

 

あくまで、支払猶予であって、免除ではありませんが、

資金がどんどん減っている会社にとって、

すぐの支払いがなくなる、ということは、

経営者にとっての精神的なストレスは減らせます。

 

また、2020年2月~10月までの連続する3カ月の売上が・

▲50%以上なら、来年支払う固定資産税はゼロ

▲30%以上▲50%未満なら、半分にもできます。

こちらは、猶予ではなく免除ですから、大きいですね。

 

2.減価償却費を増やす

 

先ほど申し上げたとおり、中小企業にとって、

税金の支払いは、できるだけ先に延ばすべきだと考えています。

 

この意味で、このコラムで何度も紹介している即時償却は、

ぜひとも使っていただきたい項目です。

 

特に、今回、テレワークの導入など、

いわゆる「3密」をさける(遠隔操作できる)ような設備投資については、

新たに即時償却の対象に加えられました。

 

これまでのA型(生産性向上設備)、B型(収益力強化設備)に加え

て、今回、追加されたのがC型です。

遠隔操作、可視化、自動制御化のどれかが可能になる設備投資です。

 

即時償却を使うことで、減価償却費が増やせます。

そうなると、税引前利益が抑えられ、法人税を減らすことができます。

資金繰りは大きく変わってくるのです。

 

 

3.回収を早く、支払いを遅く

 

私は常々、「なぜ、会社に短期借入金があるのか?」

不思議に思っています。

 

資金繰りの鉄則は、

「回収は早く、支払いを遅く」ですが

こうしていれば、短期借入金など必要ないからです。

 

しかし、悲しいかな、中小企業はこの逆になっている会社が

とても多いのです。

 

特に下請企業ともなると、生殺与奪権を元請の大企業に握られ、

回収条件は言われるがまま、という場合も少なくありません。

 

特にこのコロナ禍では、下請企業を取り巻く環境は、ますます厳しくなります。

このため、経済産業省などは現在、下請企業に対して120日以内としている支払期限の短縮を検討していて、秋ごろまでには、通達の改正を目指しているのです。

 

約束手形の期限は業種により90~120日以内と定められていますが、実際は平均110日程度となっています。今回は、この期限の短縮が検討されているのです。

 

そもそも受取手形、支払手形は日本に特有の習慣です。

特に、受取手形が長いのは、業績の悪化した中小企業の資金繰りにとって、致命傷になってしまいます。

 

私は、以前から、「回収サイトを早くしなさい!」と口酸っぱく、申し上げています。回収サイトの長い相手先は、こちらから取引をお断りするくらいの

覚悟をもって、交渉にあたっていただきたいのです。

 

B/SよりもP/L主義、特に、売上至上主義の会社は、

そんなことをしたら売上が減る、などとおっしゃいますが、

こうしたマサカの坂で一番大切なのは、売上よりも、キャッシュ(お金)なのです。

 

 

4.税務調査も先送りする

 

税金に対する私の考えは、先ほど申し上げた通りですが、

それに関連して、税務調査についても、一言触れておきましょう。

 

国税庁は、今年度の調査方針として、次のような方針を掲げていることをご存知でしょうか?

 

・納税者の個々の事情等を十分に考慮すること

 

・納税者の明確な同意があれば調査を実施すること

 

・企業がテレワークを実施している場合、必要に応じて調査官と実施し、担当者の出社日等に合わせてスケジュール調整すること。調査対応のためだけの出社は求めない。

 

・所得税、法人税、消費税、相続税等で同じ対応をすること

 

これはつまり、税務調査は当面の間、

入らせないようにすることができる、ということです。

 

調査に入りたいといわれても、

「ご存知のとおり、万一、調査があって、それによって社内にコロナ感染者が出れば、当社はとんでもない打撃を受けます。

コロナが完全に落ち着くまで、調査は見送っていただきたいと思います。」

などと伝えれば、当分、調査が行われることはないでしょう。

 

マサカの坂でも生き残れるように、会社にお金を残すには、

税務も財務もしっかりと対策をとることが大切なのです。

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