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- 眼と耳で楽しむ読書術
- 第99回「赤狩り」(著:山本おさむ)
緊急事態宣言による外出自粛要請の結果、
在宅勤務や時短勤務が増え、
家にいる時間が長くなった今日。
その割には、平時以上に読書をしているという話は
あまり聞きません。
それどころか、
「なかなか本を読む気になれない、そんな余裕もない」
と言った声もしばしば耳にします。
気持ちは重々わかりますし、心中穏やかでいられない思いは
誰もがしているところです。
しかし、酷なことを言うようかもしれませんが、
ならば、いつ読書するのですか?
気持ちに余裕ができてから、するのですか?
違いますよね、それは。
読書するからこそ、気持ちに余裕ができたり、
アイデアも浮かんでくるものです。
先の見えない不穏な状況の中で、
どれだけ平常心でいられるか、
そのカギの1つは、読書にある。
そう信じて止みません。
経営者やリーダーの皆さんへのエールを込めて、
この一冊を紹介します。
『赤狩り』(著:山本おさむ)
です。
正確にいうと、シリーズもののコミックですね。
時は、第二次大戦後。
ソ連とアメリカ、2つの大国による「東西冷戦」が激化。
米国右派の政治家は、ソ連の脅威を封じ込むべく、
共産党員および共産党シンパと見られる人々を厳しく排除。
いわゆる"赤狩り"と呼ばれるもので、とりわけ当時の娯楽の頂点に位置する
映画界を集中的に糾弾。
非米活動委員会(HUAC)による聴聞会が始まる中、ハリウッドの映画人たちは、
表現の自由を侵す権力や風評被害といかに闘うのか、
といった物語です。
歴史的傑作と知られ、日本でも一際人気の高い映画『ローマの休日』も、
この赤狩りの渦中にあった作品で、本書の軸になるエピソードの1つ。
あの爽やかな作品の背景に、映画人たちの想像を絶する熱き闘いと魂が込められていた、
と知り、驚きを禁じえません。
そのへんの事情は、巻末の解説に詳しい。
非常に読み応えがあり、本編同様に引き込まれます。
本書が、どのように構成されているのかが、この上なくリアルに明かされていて、
実に貴重。想像や創作、さらには現代史を知る上でも、一見の価値があります。
何より、赤狩りは、ひと昔前の出来事のはずなのに、
どうにも今の時代と重なるものを感じずにはいられません。
このコロナ禍によって、世の中の流れがどうなっていくのかを
読み解く上でも、本書を読んでおく意義も価値もあると確信します。
権力の激しい弾圧の中で、映画人たちは一体どのように闘い、
どのような作品を残したのか?
そして、あなたは経営者やリーダーとして、この厳しい状況をどう生き、
どんな成果を残すのか?
今読むのにふさわしい、熱き一冊!
尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は
『レスピーギ:交響詩「ローマの松」「ローマの祭り」「ローマの噴水」』(指揮:小澤征爾 演奏:ボストン交響楽団)
です。
世界の巨匠、小澤氏の最高傑作との誉れも高い、名盤中の名盤。
こんな時だからこそ、ますます、いい音楽を!
合せてお楽しみいただければ幸いです。
では、また次回。