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- 第81回「米金融緩和の出口は次の強気相場の入口か?」
年内と予想されていた米国の利上げ、金融緩和政策の出口が中国の株価バブルの崩壊や実体経済の減速に配慮して、先送りされるかどうかが注目されてきた。
世界の金融市場は、今回の米国の金利引上げにより、過去に世界中のばら撒かれた投資資金が米国へ逆流して、新興国通貨や株価の下落を織り込んできたが、まだ十分にその材料を消化しきれていない。この時期に中国経済の減速と資産バブル崩壊が発生して、当面はリスク回避の姿勢が強まりそうだ。日本市場は、引き続き好調な企業業績が期待されているが、その好調さもアベノミクス効果による円安効果が大きいと考えられており、今後は中国経済の減速に業績の足を引っ張られる懸念も増大している。
株式投資に関しては、長期投資の成果が最も高いことは数々の研究で証明されているが、10年とはいわず3~5年程度の比較的短い期間であっても、景気変動やバブルの発生と崩壊は避けられないほど、グローバル経済下で金融市場の変化は急速かつ激しい。2008年9月に起きたリーマンショックと世界同時不況から7年が過ぎようとし、その原因となった2007年2月のサブプライム問題からは8年余が経過した。ユーロ問題や中国問題などを原因に金融市場の混乱が起きることも念頭に今後の投資戦略を考える慎重さが求められる。
元々、短期的な市場変化を予測することは不可能に近いが、長期資産運用に関しては、経済社会の変化の方向などから効果的な予測をすることは可能である。そのような予測に基づく長期投資の成功例が、本稿で紹介してきたジョン・テンプルトンやウォーレン・バフェットだ。彼らは短期的な市場変動には一喜一憂せず、むしろ株式市場が大きく調整した時期にこそ、日頃から研究を怠らず割安になった優良銘柄に集中投資する手法、いわゆる「割安株投資」で大成功を収めてきたことを思い出したい。
わが国のバブル崩壊と失われた20年の教訓が、今後懸念される中国バブル崩壊による金融市場の激変にどう生かせるか、また、ギリシャ問題が対岸の火事ではなく近未来の日本の予想図にならないように、マクロとしての経済政策が実行され、ミクロとして私たちの資産運用に生かされるべきだ。今後に関しては、大規模な金融緩和による過剰流動性が来年にかけて世界規模で収縮し始める環境変化に厳重注意が必要だ。前兆現象として新興国でも構造改革を行わない国から資金逃避が起きている。日本も金融緩和や原油安の追い風が吹く間に成長戦略と構造改革を進展させなければならない。新年度以降、国内政治が経済問題を素通りして、成長戦略も構造改革も目立った進展がないのが気掛かりである。
以上