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戦略・戦術

第158話 回収サイトを縮めなさい

強い会社を築く ビジネス・クリニック

 前回のコラムでは、売上代金の回収方法について、私の考えを申し上げました。これに関連して、今回は、売上代金の回収サイトについて、お話しましょう。

 みなさんの会社の貸借対照表には、「短期借入金」があるでしょうか?

 おそらく、8割くらいの会社が、「ある」とお答えになるでしょう。

 私には、これが理解できません。

 

 『なぜ、わが社には短期借入金があるのか?!』

 

 お考えになったことはあるでしょうか?

 

 答えは簡単です。

 

 “回収が遅くて、支払が早い”からです。

 たとえば売上代金の回収に3カ月かかる会社があります。

この会社が、仕入代金を〆後2カ月で支払っていたら、どうなるでしょうか?

ふつうは、資金が足らなくなりますね。

 

 その不足資金を埋めるために、短期借入を行うのです。

これがいわゆる“運転資金”です。

 

 ですから、短期借入金(運転資金)をなくそうと思えば、

『回収は早く、支払いは遅く』なのです。このテーマに取り組む必要があります。

 

 特に、回収を早くすることに取り組んでいただきたいのです。

今は、その絶好のタイミングなのです。このことをご存知でしょうか?

 

 たとえば、建設業では、

昨年あたりから、協力業者に対して支払いを早くする、

という流れが加速している、と日経新聞でたびたび記事になっています。

 

 この背景にあるのは、一つには人手不足です。

支払いサイトを縮めることで、優秀な協力業者を確保したい、ということです。

 

 最近の話でいえば、大手建設業者(D社)が、

支払サイトを月末締めの翌月15日に変更しています。

カネのない中小企業にとっては、大変ありがたい話です。

 

 実は、こうした話は、何も建設業に限ったことではありません。

 

 私の顧問先には半導体業界に属する会社もありますが、

ここでも同じような話が出ているのです。

業界的にはサイト4か月が主流のようですが、

それを2カ月に縮めるという方向性が打ち出されています。

 

 それから、特に相手先が大企業(上場会社)の場合は、

協力業者への支払サイトを長くしていると、

“優越的地位の濫用”ということで、

公正取引委員会から指導を受けることになります。

 

 みなさまの中には

公正取引委員会からのアンケートが届いているという会社もあるでしょう。

その中に、代金決済についても項目がしっかりと設けられています。

 

 昨今、上場会社が一番気にしているのは、

コンプライアンスです。日本語で言えば、“法令遵守”です。

コンプライアンスを守れない、コンプライアンスに甘い会社は、

それこそ“ブラック企業”として烙印を押されてしまうのです。

 

 だからなおのこと、支払サイトを短くして、

“取引先をいじめている”と見られないようにしようとするわけです。

 

 そうかといって、全ての得意先が支払サイトを短くするはずがありません。

ただ口を開けて待っているだけでは、回収サイトは縮まらないのです。

つまり、ターゲットを絞って、時間をかけて交渉していただきたいのです。

 

 まずは、得意先別の回収サイトの一覧表(リスト)を作成します。

普段からこうしたリスト作成している会社は、意外と少ないものです。

 

 リストを作ると、必ず、他社よりも長い得意先が見つかります。

金額が非常に小さい先はともかく、それなりの取引金額で、

回収サイトが長い会社があれば、是非とも、交渉していただきたいのです。

 

 交渉は相手があるため、思い通りには進みません。

しかも、今回の相手は得意先です。

 すんなり行くことなどありえないですし、当然、時間は長くかかります。

100%上手くいくことなど、最初から考えないようにしましょう。

 

 意外かもしれませんが、こうした交渉でネックになるのは、

実は得意先ではありません。

 

 最大のネックは、経営者、あるいは営業マン自身なのです。

 

「うちの業界は古くから、サイト●ヶ月なんですよ。」

「うちの業界は、特殊ですから・・・・困ったものです。」

「何十年と取引をしてきたなかで、今更いいにくいですよ。」

「サイト交渉して、注文が来なくなったらどうするんですか?」

最初から、サイト交渉なんてできない、と思っているのです。

 

 しかし、実際にしてみると、

紆余曲折はありますが、意外にうまくゆくものです。

 

 「たぶん、ダメだろうな~」という弱腰の姿勢では、

そもそも交渉にはなりません。

 交渉していても、本気でないことが相手にも見透かされて、

うまくかわされるのがオチです。

 

 交渉のポイントは、

第一に、決定権のある人間と交渉すること

 

第二に、こちらは、役職者(取締役、部長)を同行させ、数をそろえる

 

第三に、なぜ短くしてほしいか、理論武装すること

単にお願いするだけではNG。文書にまとめておくのも効果的です。

 

 実際に私たちがお手伝いしたO社のケースでは、

ある特定の得意先X社に対して、

 

・サイト短縮は時代の流れである

・X社は得意先のなかでも、特に長い

・O社は、X社の満足度を高めるため、優良な仕入先、外注先を確保している。

・このため、O社から仕入先、外注先への支払サイトは短い

・つまり、O社は「回収が遅く、支払いが早い」ため、資金負担が大きい

(将来何かあれば、すぐに経営危機に陥ってしまう)

 

このようなことを並べて交渉にあたりました。

 

 私たちがお手伝いしたケースでは、

一度断られても、半年後、1年後にもう一度出向いて、

交渉が成功した場合もあります。

 

 みなさまの会社も、是非とも資金繰りを改善し、

短期借入金をなくしていただきたいと思います。

 

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